懐かしい文化祭の雰囲気が良く出ています。僅か五千文字にたりない記述で、あの頃の空気感、勢いがよみがえります。登場人物も掌編なのに多数に渡りますが、それぞれのカラーがくっきり。クラス内ヒエラルキーの各々のポジションも鮮明です。一瞬、作者の方はリアル高校生かと思いましたが、かなりの執筆歴をお持ちのようです。筆力のなせる技でしょうか。お題は滑稽ですが、対立から協調へクラスがまとまる流れも読んでいて楽しい。「全員が参加」って副題もぴったり。個人的にはこんな流れの作品が好きなんです。
洋菓子VS和菓子、といえばいいんだろうか。学園祭の出し物を巡っての、不思議な人間の嗜好対決は、某「●●の山」「●●の里」を思い出させる。対決はやがてコミュニケーションの手段となり、クラスが一つにまとまっていく気持ちよさを感じる傑作です。