記憶喪失の彼女に、俺はもう一度告白する
半井帆一
プロローグ
俺には、ずっと前から隣に住んでいる、幼馴染みがいる。
そして、ずっと前からの悩みがある。
俺は、その幼馴染みが大好きだ。
俺の名前は、
そして、
この安嶋千鶴は、艶やかな黒髪のポニーテール、決して大きくはないが、やや豊かな胸、あまり頭を使うことは得意ではないが、それを補う運動神経。そして、とてもかわいい!
これは、惚れない方がおかしいレベル。
俺と千鶴が初めて出会ったのは、幼稚園の時。親の都合で、引っ越してきた千鶴。
今と、さほど変わらないやんちゃな性格で、隣に住んでいる俺は、すぐに遊びのターゲットにされたものだ。
鬼ごっこに野球にサッカー。体を動かす遊びはだいたいやった。かくれんぼとかは、自分から鬼に見つかるような行動をとるし、だるまさんが転んだなんかは、速効アウトだ。
とにかく、ずっと動き回っているようなやつだった。
まぁ、そのおかげで、大分体力はついたし、楽しかったからいいけど……。
そんなこんなで、いつの間にか、彼女に惚れていたのである。定番の、幼馴染みと一緒にいる時間が幸せだと気づいて、「あ、この人を好きだったんだ」的なやつ。
そして俺は、とある決心をした。
「千鶴に告ろうと思う!」
ある日の夜、俺は思いきって、とある決意を千鶴の両親に打ち明けた。
俺の両親は、仕事の都合で、両方とも帰ってくるのが遅い。だいたい自炊するが、めんどくさいときは、こうして千鶴家にお邪魔するのだ。
この日、千鶴は塾なので、彼女が家から出ていった後、俺は思いきって、相談したのだ。
少々張り切って、大声気味になったせいか、千鶴両親は一瞬目を丸くしたあと、互いに見合わせて声を出して笑った。
「ちょ、ちょっと!真剣に話しているんですよ!」
「いや、それはしっているけど。普通はその話、好きな人の両親に相談するか?」
「そ、そうだけど……」
そこまでツボるか?
「ま、いいんじゃない?弘人くん、いい人だし!」
そう言ってくれたのは、千鶴母。
「今度、俺たちは遊園地行くことになっているから、一緒に連れていってやる!」
続けて、千鶴父が提案をした。
「え!?いいんですか!?」
予想外な返答に、今度は俺の方が目を丸くしてリアクションをとる。
「おう!いいぜ!じゃんじゃんコクれ!」
俺は、嬉しさのあまり、勢いよくイスから立ち上がり、そのまま千鶴家から飛び出した。
どうしようもない嬉しさを、とにかく表現したい。そういう思いで、夜の町を走り回った。
「よぉっしゃぁぁぁぁあ!!!」
俺の雄叫びが、夜の町に響いた。
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