12月のダイアリー 4
11月10日(日) 晴れときどき曇り
久し振りの休日だけど、なにも予定がない。
家のなかでひとりでいるのは辛い。
なので、はるみに電話してみたら、彼女もたまたま休みだったので、駅で待ち合わせて街に行き、地下街とかでショッピングしたあと、お茶した。
そう言えば、みっこ以外の友だちと出かけるのって、最近はほとんどなかった。
みんな学校が違うし、休みも違うし、彼氏のいる友だちはそちらばかり優先して、なかなか会えない。
なんだか女同士の友情って、虚しい。
高校時代はあんなにいつもいっしょにいたのに、しょせん、その場だけの繋がりなのかぁ。
みっこは『長いこと親友ができなかった』って言ってたけど、『友だちが多い』って思っていたわたし自身も、実はみっことたいして変わらなかったのかもしれない。
人間なんて、結局ひとり。
はるみも『新しい彼氏ができた』って言って、なんだか浮かれていて、会っているあいだ中そんな話ばっかり。
そういうのを見ているのは、やっぱりいたたまれない。
彼女に川島君と別れたこととか話したけど、今は自分の幸せに酔っているはるみは、わたしの話もうわの空。
ううん。
彼女はわたしの話を、ちゃんと聞いてくれてたのかもしれない。
『もっと前向きなよ。新しい彼氏ができれば、川島君のことも忘れられるよ』と、はるみは言ってた。
でもそれって、なんの解決にもならない。
川島君のことを忘れられないから、わたしは苦しんで、前向きにもなれない。こんな状態で、新しい恋愛なんかに踏みだすなんて、できるわけがないじゃない。
はるみの言葉は、わたしの心を素通りする。
なんだか虚しい。
もちろん彼女も、わたしの辛さをわかってくれて、慰めてくれたのかもしれない。
わたしが心を閉ざしちゃってて、はるみの話を受け入れなかったのかもしれない。
心を開くのって、案外難しい。
だれに対してもできるってわけじゃ、ないみたい。
みっことは、そんなことはなかった。
彼女はわたしの話をいつでも真剣に聞いてくれて、アドバイスしてくれて、わたしを真剣に叱ってくれた。
そんな友人って、ほんとに貴重だった。
11月12日(火) 晴れ
本当なら今日は、わたしと川島君の1周年記念日。
だけどわたしたちにはもう、記念日なんて、ない。
あるのは、川島君と別れた11月4日の、『失恋記念日』だけ。
恋人同士の約束って、虚しい。
つきあっている間、どんなにいろんなことを約束しても、別れてしまったらそれは全部、『なかったこと』になっちゃうんだもの。
それだったらわたしは、川島君となにも約束しなけりゃよかった。
ううん。
恋人同士にならなきゃよかった。
ただの友だちだったら、今でもときどきは会って、いっしょに同人誌作ったり、小説講座のあとでお茶したりして、つきあっていけたのかもしれないのに。
もし彼に、わたし以外の恋人ができたとしても、『よかったね』って言ってあげて、思い出したときだけでも連絡しあって、細いけど長くつきあっていけたかもしれない。
確かに、彼に他に恋人がいて、ただの友だちでいるってのは、せつないかもしれないけど、いっさいの関わりがなくなってしまうより、マシ。
どうして求めたりしちゃったんだろう?
そりゃ、彼と恋人になれたのは、嬉しかったし、幸せだった。
だけどそれは、たった1年にも満たない、
こうして別れてしまえば、その何倍もの悲しみや苦しみが襲ってくる。
なんで、恋人同士になんか、なっちゃったんだろう?
一年前のあの日、川島君とキャンパスの丘で会えなければよかった。
そうしたら、今、こんなに苦しい思いに
こんな、ネガティブな考えはよくない。
そうは思うけど、つい、考えてしまう。
川島君とつきあっていなかった、わたし。
大きな幸せはなかったかもしれないけど、大きな悲しみもなく、手のひらに乗る程度の小さな幸福が、続いていたかもしれない。
みっことだって、親友のまま、いつまでも無邪気に、笑いあっていれたかもしれない。
できることなら、時間を戻したい。
一年前の今日に。
つづく
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