第5話 ヨーロッパのハワイ
アイルランド滞在中に、クリスマスを経験しました。クリスマスイブの晩に当時住んでいたゴールウェイという街の中心部に出てみたのですが、パブもお店も全部閉まっていて、通りには人っ子ひとりいなくて衝撃でした。日本と全然違う…! キリスト教圏のクリスマスは、みんな家で静かに過ごすんですね。どっちかというと、日本の元旦を、極限まで厳粛にした雰囲気でした。
さて、そんな年の瀬に、当時仲が良かったスペイン人のヨランダに招待されて、彼女のご実家にお邪魔させていただくことになりました。スペイン人とはいえ、彼女の実家はスペイン領カナリア諸島にあります。カナリア諸島……聞きなれない島じゃないですか? 当時の私は、そんな島があるなんて全然知りませんでした。地理的にはモロッコの西側、大西洋に浮かぶ島で、とても気候がよく、ヨーロッパのハワイとも言われる場所のようです。産業は(多分)観光と農業じゃないかな。私は何の事前知識もなく訪れたのですが、島にはハワイ同様、海辺に立派な観光スポットが点在していました。気候はハワイより穏やかかな? というくらいの心地よさで、とてもいいところでした。観光地のせいか、多分ダブリンから直行便が出ていたと思います。あまり時間がかかることもなく、飛行機であっさりとテネリフェという島に到着。テネリフェ島は、カナリア諸島の中心の島になります。年末だったせいか島の観光スポットはヨーロッパからの観光客でにぎわっていて、その島にヨランダファミリーは住んでいました。住宅地のほうは南国独特ののんびりとした雰囲気です。到着したら、彼女のお兄さんのお宅を貸してもらえて、そこに数日間滞在させてもらえました。そのおうちがモデルルームかよ!!ってぐらいすごくかっこよくて…!!! フランスやアイルランドでも、人のおうちにたまに呼ばれることがあったのですが、訪れる家はどこも美しいお住まいばかりでした。片付けが上手なのか、無駄なものを買い込まないのか…。すっきりと片付いていて、全体のカラートーンなども統一されていて、本当に素敵なところばかりで…、うちみたいなモノが散乱する汚部屋など決して見せられない…と思ったのを覚えています…。
そんなすみずみまでぴっかぴかでハイセンスなお宅に滞在させてもらいつつ、ヨランダの家族に挨拶して、彼女の地元の友達と三人でテネリフェの山に登ったり(スペイン最高峰のテイデ山:標高3,718メートルありますが、上のほうまで車で登れます…車で登れる富士山級の山すごい…途中に見えるのはサボテンっぽい植物なのに頂上のほうはダウンコートが必要なほど寒く…異世界感がすごかったです)観光地のマーケットをぶらついて食材を買い込み、大晦日の晩には色々食べ物を持ち寄って(日本の食べ物を作れといわれたので、私は肉じゃがを作りました)、ヨランダに超ミニ丈のてかてかなワンピースを着せられ、激しく化粧を施され、踊ろう! と言われて妙なテンションで踊り…、よく分からないけど、これがパリピってやつ? っていう謎の一夜を過ごしました(厚化粧で踊ってる証拠写真もありますが、自主規制しときます…)。スペイン本土のほうの事情はよく分からないのですが、カナリア諸島の年越しはみんな男子はスーツ(タキシード?)、女子はドレス姿でばっちり着飾ってお外で楽しくお酒を飲んで過ごすのが一般的な感じでした。何も分からないまま、向こうの慣習にのっとって一緒になって騒ぐうちにミレニアムな年を越え…、気が付けば新しい一年が始まっていました。翌日二日からは、ヨランダの職場(彼女は教師でした)のある、別の島(どの島だったかは忘れました…)に船で渡る予定だったのです、が。
……元旦の晩のことです。
突如、目が覚めました。起きた途端、すごく気持ちわるくなっていることに気付き、めちゃくちゃ焦りました。こんな美しい部屋を汚すことは絶対に避けねばならないので、慌ててトイレに駆け込みリバース。それだけではなく、体調がおかしい…熱もある感じだし…。なんてこった。慣れない異国で体調を崩すってめちゃくちゃ不安です…病院のシステムなどもよく分からないし。おまけにせっかくの計画も台無しになってしまい、ヨランダにもすごく心配をかけてしまって申し訳ない気持ちもあり。色々なことがぐるぐるしながらも、体はどうにも動けないので、翌二日は終日ベッドでぐったりしていました。どうしてこんなことになったのか(泣) 結局、病院にも行かずに終わったので原因は特定できていないんですが、多分、大晦日の晩から元旦にかけて置きっぱなしになってた生ハムに当たってしまったんだと思ってます…。でも寝込んだのは私だけだったので、多分そもそも現地の人と腸内フローラの編成が違うとか、そういう加減の問題なのかもしれませんよね。外国で生ものを食べるときはくれぐれも要注意です。
いやはや、イニシュモア島で犬に噛まれて以来の危機でした。インフル級の高熱が出て最初はどうなることかと思いましたが、寝込んだ翌日には、ちょっとやつれながらも無事復活しました。1日で復活。若いっていいね。
そんなわけで、私の二十一世紀の幕開けは一発目から散々だったというお話でした。カナリア諸島…遠い印象があってなかなか行ける気がしませんが、ヨーロッパの人々にとってはとてもメジャーな観光地らしく、主要な町からは直行便もあったりして比較的行きやすいです。観光エリアは英語も通じるよ(ここ重要)!!! ヨーロッパを訪れることがありましたら、ついでに(?)是非足を運んでみられてください!! 私のような目に遭わないよう、食べ物に多少気をつけていただけたら…、きっと素敵な旅ができると思います。出会う人たちものんびりとしていて優しくて、本当にめちゃくちゃ住みやすそうな、楽園のように穏やかな雰囲気の島でした。
旅の恥切り貼りプロジェクト 時効ですよ! 西乃 まりも @nishinomarimo
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