大学教授の論文と統計学

Episode01

 とある大学に勤める教授は悩んでいた。

 論文が完成しない、と。


 学会で発表予定の論文は論理構成は完璧だった。問題はただ一つ。試験データ、アンケート調査と言った物的証明、推論ではなく事実として形而上学的段階からの脱却を果たすためには必要不可欠なデータであった。


 学生に実施するアンケートの結果が論文の要となる。論証をより強固なものとするためには必ず載せたい。しかし、学生たちは見事なまでに期待を裏切ってくれたのだ。論証の強化どころか論理そのものの穴(欠陥)を露呈させる結果となった。


 どうしたらいいんだ……


 大学教授は研究室で一人頭を抱えていた。


 ふと思い至ったように教授は机の引き出しを漁り始めた。


 元々足の踏み場もない程に散らかっていた研究室も、教授なりに整理されていた事が引き出しの中身をぶちまけたことで判明する。


 正真正銘散らかった研究室で一人、教授は一枚の名刺を手に電話を掛けていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る