統計世界
小暮悠斗
統計世界
序章
Episode00
統計学。不確実性を伴うデータを集めて解析、そして推測する学問。少し意地悪な言い方をすれば、「たぶん」「おそらく」「きっと」なんて言う曖昧な答えしか導き出せない学問である。
故に理系――特に数学との確執は否めない。
傍から見ればどちらも数字が関わってくる学問であり、数学の割合を求める行為(公式・方程式)の延長線上に統計学があるようにも思える。しかし、事実は異なる。
考えてみてほしい。
数学には明確な解(答え)が存在する。対して統計学はどうだろう。明確な答えなど持ち合わせてはいない。
例えば、致死率80%のウイルスがあるとする。このウイルスに感染した人間の8割が死に至るという統計は、ウイルス感染者の死亡者数を把握するために行われる予測に過ぎない。予知ではなく予測なのだ。
統計学とは、不確定要素という名の花を束ねた不確実性の花束なのだ。
ひどく雑な解釈をすると、「たぶん、このくらい学」だ。こんなことを言うと統計学者の方には怒られるかもしれないが、統計学という学問の胡散臭さはかなりのものだ。
不確実ということを全面的に認めているのだから。まあ、その点において評価は分かれるだろうが、個人的にはプラスに捉えている。
完璧な学問など存在しない。それが僕の持論だ。どんな学問にも穴はある。全ての学問は不完全な人間が生みだしたものだ。不完全な存在が生みだしたものが完全であるはずがない。どこか神学的発想と思想によって構築された持論だが、荒唐無稽ということは無いだろう。
つまり、統計学という学問は他の学問に比べて不確実性に満ち溢れ、その不確実性を前面に押し出した
数十年前までは――
ある日を境に世界は変わった。
統計学という学問に不確実性が無くなったのだ。
統計学は、確実性しかない学問へと生まれ変わった。
その出来事がもたらしたのは
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