不動産


 「ケイゴ 部屋とはなんじゃ 宿の部屋と何が違うんじゃ?』

 ケイナは部屋にも興味を示した。


 「ああ 部屋な 部屋は自分達で生活する部屋の事だ ここは宿 受付に頼めば

 飯も作ってくれるし 風呂も勝手にお湯が出るだろ その代わりに見返り、報酬を

 払うって仕組みだ そこまではわかるな?」

 「うん」

 「家探しって言えばよかったのかな……家は分かるだろ?」

 「ハインツの家か?」

 「そうそう!あんな感じだ あれと同じような物をを借りるつもりなんだ」

 「ふむ わかった」

 「あそこまで大きくなくても 家があれば自分達で飯も作れるし風呂だって沸か

 せるんだ 自分で借りれば何時でも好きな時に帰って寝れるんだよ 家って

 ものは」

 「そうか その方がいいって事なんじゃな! わかった」

 「……ああ」

 (最後の辺は、分かってないんだろうな)


 「そろそろ溜まったろ 風呂はいるか! 朝風呂も気持ちいいぞ」

 「風呂はいろう!」

 「……待ちなさいよ」

 「……えっ」

 「…さっきから聞いていれば 簡単にそっちの方が お得だって説明したら

 いいのよ! 『好きな時に帰って寝れる』とか それじゃ宿だって

 同じじゃない!」

 「…起きていたなら声かけろよ」


 (人に聞かれていないと思っている事を、聞かれたと知ると結構恥ずかしいな)


 「ケイナちゃん おはよう」

 「おはよう! テレジア!」

 「さっ キレイキレイしましょうね 行くわよ お風呂」

 「うん!」


 俺の風呂は、また後回しにされた。その時、ドアを叩く音がした。


 コンコン 

 ドア越しにハインツの声が聞こえた。

 「ケイゴさん 起きてますか? ハインツです」


 俺はドアに向かい鍵を開け部屋に招き入れた。

 「おはようございます ……お二人は風呂ですか?」

 「ええ どうぞ座って下さい」

 ハインツは俺が昨夜、座っていた椅子に腰掛けた。


 「どうしたんです こんな早くに てっきり昼頃来るのかと思っていましたよ」

 「いえ 朝飯くらいご馳走させて下さいよ 近くに良い店があるんです それに

 カインと会う前に 部屋を見れるよう 昨晩のうちに手配しましたから 良かった

 ら見に行きませんか? 一応三軒用意してくれました」

 「おお! 是非 何から何まですいません ハインツさん」

 「いいえ 私は何もしてませんから ハハ では お二人が出たら食事して物件

 を見に行きましょう」

 「よろしくお願いします」


 俺は立ち上がり風呂場の入り口で声をかけた

 「おーい テレジア ハインツさんがきたぞ 出かけるぞ」

 「…聞こえていたわ 今行くからちょっと待って」

  

 テレジア達は中で服を羽織っているようだ。


 「では私は下で待っていますので ゆっくりで構いませんから」

 そう言うとハインツは部屋を出た、俺は風呂場の前で中に声をかける。


 「ハインツさん下に行ったぞ 出てきて着替えたらどうだ?」

 「今出るわ」

 二人はどうやら一時的に、普段着を着た様だ。風呂から出て新しく着替えてから

 降りていくので、俺も下で待っていろとテレジアが言う。荷物を持ち部屋を出た。


 下で待っているハインツと合流して五分くらいでテレジアとケイナは下に

 降りてきた。

 「ハインツさん おはよう ごめんね遅くなって」

 「いえいえ こちらこそ お風呂中にお邪魔して申し訳なかったです」


 俺達はハインツが知る店で朝飯を食い一つ目の物件へ向かう事にした。


 「これから行く私の知人は フドウという建物や家を貸したり売ったりしている

 者です カインの仮住まいもフドウが用意してくれました」

 「フドウ…フドウさんですか?(不動産だな……)」

 「ええ 何か?」

 「いえ……一つ目の物件は何処なんです?」

 「彼が仕事で使っている建物のすぐ近くに空きがあるようなんです 待ち合わせ

 ついでにその部屋から見て行きましょう」

 「わかりました」


 一つ目の物件は、割と中心部に近い位置に建っていた。外観は細かなレンガを

 積み上げて作られていて家というより事務所のような箱型の二階建ての

 建物だった。

 ハインツは馬の手綱を柵に縛りフドウを迎えに行くという。俺達は建物の前で

 待っているように言われた。


 「裏はどうなってんだろうな 見てくる」

 建物の裏へ回ってみると釜も無かった、代わりに壁からダクト?のような空調

 設備が出ていた。建物の周りを一周するがそれ以外に何も無かった。元の場所に

 戻るとハインツがフドウだろうか、もう一人連れて帰ってきた。

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