…PEACE?

カゲトモ

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 気が付くと時計の針が頂点を差していた。丁度深夜零時になった時、店内にはまだ常盤さんがいた。まだ飲んでいる。グダグダ愛について語りながら飲んでいる。

木曜の夜は客入りがもともと少ないこともあるが、店内には常盤さんしかいなくなっていた。客がみんなその愛講座に付いて行けなくなって出で行ったんじゃないかと思うくらい。いや、それは言いすぎか。

「それでね、花菱くん。愛って言うのはね」

 酔うとシラフ時のスマートさが無くなり、おっさんクサくなる常盤さんは、もう耳だこの話を繰り返していた。

「はいはい、そうですね」

「君は話の分かる青年だなぁ」

「おかげさまで」

 閉店は一時だから、今日はこのまま常盤さんと二人で終わるかも、なんて思っていると、ガロロロン! と突然大きな音がして扉が開いた。

「いっ、らっ」

「パパッ!」

 開いた扉からはその言葉と一緒に長い髪の女の子が小走りで入って来た。

 何事かと思って瞬いてその光景を見つめると、女の子は一直線に常盤さんに向かって走った。

「志麻!」

 彼女を受け止めるかのようにして、常盤さんは両手を広げる。そこだけがまるでドラマのようにスローモーションの動きに見えたのはきっと気のせいじゃない。

 ぱふん、と効果音が出そうなほど綺麗に抱きとめられた女の子は「パパ?」呼んだ。

「遅いから心配で迎えに来ちゃった」

「おやおや、そうなのかい。それは悪いことをしたなぁ」

 腕を離してよしよしと頭を撫でてやる。

 それを見ている俺の表情と言ったら、まあきっと能面のように張り付いた笑顔だっただろうと思う。

 あーーーーー。娘降臨されたし~。

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