朝焼け探検隊

夜水 凪(なぎさ)

朝焼け探検隊

「皆の諸君!今日は先日発表したあの計画を遂に実行しようと思う!」

朝日が上がるよりも早い時間に隊員たちは集められました。

「隊長!」

隊長の言葉に皆驚きを隠せないようです。

「まあ落ち着きたまえ。計画は十分練ってある。何も心配することはない。」

そんな彼らを落ち着け、隊長はさらに続けました。

「今日は霧が少し出ている。そして気温も最適だ。こんなにあの計画を遂行するのに適した日は他にないだろう!」

いつも何かと細かい所に心配し、なかなかゴーサインを出さない隊長がこんなにも積極的なのを隊員たちは初めてみました。それと同時に、彼らも計画を達成させたいので、こうしちゃいられないと、大急ぎで準備を始めました。


そして、探検隊は出発したのです。


「さあ、皆、急ぐぞ!時間はどんどん迫って来ている!さあ!急げ!」

山道を彼らは歩き続けていましたので、段々疲れてきておりましたが、隊長の励ましで、隊員たちも元気を振り絞ります。

「いっち、にっ、いっち、にっ、」

もうすぐ日が昇るのでしょうか、だんだん明るくなってきました。しかし、霧がかかっているのでぼんやりと明るいぐらいです。


「さあ!皆!いよいよだ!全員各持ち場につけ!」

それを聞いた隊員たちは蜘蛛の子のように散り、それぞれの役割を果たそうと動きました。


「…………きたぞ!いまだ!」

隊長の合図と同時に辺りが急に赤くなりました。まるで赤い絵の具を混ぜた水の入った瓶の中に閉じこめられた様です。隊員たちはいたる方向を手で触ろうとしたり、霧を瓶に詰めたりしています。

「思った通りだ!ああ、もう時間がない!どうだ!何か解ったか?」

隊長は嬉しさと焦りを露わにし、隊員たちに聞きます。


しかし、答えが出せたものはいませんでした。


そして、太陽が高度を上げてしまい、

周囲の赤は消えてしまいました。


「…隊長、申し訳ありません。どこにも入り口を見つけることはできませんでした。」

隊員たちは計画を達成させられなく、本当に悲しみました。

「いや、いいのだ。やはりこの計画は無謀だったのやもしれん。霧が朝焼けに焦がされ、赤く染まった中に別世界への入口があるかと思ったが、そうではなかったのかもしれん。これも一つの成功だ!皆のもの!お疲れであった!

それでは撤収!」 


こうして、早朝の山の中、探検隊は楽しそうに降りていきました。


彼らは朝焼け探検隊。


朝焼けに捕らわれ、人生をかけ、朝焼けの秘密を解こうと今日も頑張ります。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

朝焼け探検隊 夜水 凪(なぎさ) @nagisappu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ