美那(1)
「いやー、本当に突然のことで驚いたよ。まさか伸哉が死ぬなんて。信号無視だったんだろ?」
「ああ。だけど何故か裸足だったらしいんだ。だからもしかして自殺だったんじゃないかって話だぞ」
「自殺? ああ、でも最近の伸哉は少し変だったよな。青がどうのこうのって」
「なんだ。斗真にもそんなこと言っていたのか? 俺にもそんなこと言っていたぞ。確か、彼女がどんどん青になっていくとか」
「彼女って合コンにいた美那ちゃんって子だよな? たまたまこの前コンビニで見かけたんだけど、合コンの時より痩せていてメチャクチャ可愛くなっていたぞ。伸哉は何が不満だったんだ。ていうか今日の葬儀に美那ちゃんも来ているのかな?」
伸哉の友達がそんな話をしている後ろを喪服に身を包んだ私は通り過ぎる。
口角が上がるのを抑えるのは難しい。
斎場の外にはまだ何人も人がいた。
今はまだダメ。
あと少し。
あと少しだけ我慢。
◆
私は許せなかった。
私がいながら他の女と関係を持った伸哉がどうしても許せなかった。
伸哉は頭の悪い男だ。
だから浮気をしていることはすぐに分かった。
そして私が知っていることにも気が付いていなかった。
裏切り者には罰を与える。
私は心にそう決めていた。
伸哉に罰を与える方法。
色々考えた末に私が決めたのは青を利用することだった。
きっかけはダイエットだった。
私が伸哉に言われてやっていたダイエット。
それは青色ダイエットというものだった。
人間は青いものを見ると食欲が無くなるというのを利用したダイエット方法で、友達の聡子から紹介されたダイエット方法だった。
聡子は、伸哉と初めて出会った合コンに一緒に参加していた子で、有名な薬品会社に勤めていた。
そして、そこで開発された青い目薬という商品を発売前にこっそり貰っていたのだ。
その目薬は、食事の時に目に数滴垂らすだけで、一時的に視界を青くすることが出来るというものだった。
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