青の世界(1)

どのくらい眠っていたのだろう。


目を覚ますと目の前に美那の顔が見えた。


青い美那の顔。


ここはどこだ。


そうだ、俺の部屋だ。


だけど変だ。


すべてが青い。


壁も床も天井もドアも机もベッドもすべてが青い。


「伸哉? 大丈夫」


美那は青に染まっていた。


文字通り、青く染まっていた。


腕も足も舌も歯もすべてが青かった。


「ねえ、伸哉……大丈夫?」


俺の目から液体が零れた。


俺はそれを手で拭い取った。


青い涙だった。


そしてそこで気が付いた。


俺の腕も青く染まっていることに。


俺は慌てて洗面所へ行き、鏡を見た。


「うわあああああああ!」


俺は叫んだ。


そこには美那のように全身が青く染まった俺が映っていた。


「あああああああああ!!」


叫びながら俺はリビングへ戻った。


美那が俺のことを見つめた。


「見るな、見るな、見るな! 見るな! 見るな!!」


美那のせいだ。


美那のせいだ。


ぜんぶ美那のせいだ。


美那が悪いんだ!!


俺はすぐ近くにあった自分のスマホを手に取った。


「お前のせいだ! 全部お前のせいだ! 何もかもお前が、お前が悪いんだ!」


そして俺は持っていたスマホを美那に思い切り投げた。


スマホは鈍い音を立てて美那の額に当たり、そして床に落ちた。


美那の額から血が流れた。


青い血だった。


額からドクドクと流れる青い血。


「ば、ば、ばけ、ば、化け物!」


俺はその場にいるのに耐えられなくなり裸足のまま部屋から飛びだした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る