ミーズ防衛戦3
「もう一つ……っ!」
続けざまに放つカナメの矢が次々と竜鱗の鎧の騎士に変わり、
竜鱗の騎士達の剣の腕自体はそれ程ではないが、空中戦が出来るというのは大きい。
砦を攻撃していた
「な、何アレ……」
「……
呆然とした顔で上空を舞う竜鱗の騎士達を見上げるアリサの後ろで、エリーゼはそう呟く。
そう、それは間違いなく「
これ等にかかった魔法は「
それを魔力を流すだけで簡単に使える
その視点から見ればカナメの矢から生成された「翼ある竜鱗騎士」は一線級の性能であることは間違いない。
そんなものが自分の近くにどっさりと積んであるという事実にエリーゼはゴクリと唾を飲み込む。
正直に言って、ありえない程の贅沢な戦い方であり……しかも、この全てがカナメの
上空に現れた竜鱗騎士達の姿に弓を防ぎながら前進を続けていた
「い、今だ! 空はアレに任せて……全隊、地上の盾持ちを狙い撃て!」
魔法士部隊の指揮官もその好機に気づき、全員に地上の攻撃を命じ……放たれた魔法が地上の盾持ちの
矢を防ぐだけの木の盾は当然魔法を防ぐには足らず、盾持ちの
それを本来はサポートする役割であっただろう
「……ふうっ」
連続で赤の矢を放ち続けていたカナメが息を吐いて肩を軽く回す頃には、地上も空中も防衛側有利の状況へと変化していた。
「おつかれさまです、カナメ様」
「あ、ありがとうございますハインツさん」
ハインツに木のカップに入った水を手渡されたカナメはそれを一口含むと、周囲からの視線に気付き居心地悪そうに身体を揺らす。
「え、えーと……アレっていうか、この赤い矢なんだけど。これがドラゴンの鱗で作れたやつなんだ」
「そりゃそうだろうけど。何アレ」
「え、何って……俺も作った時にたぶんそういう矢だろうなーってのがあっただけで」
矢の名前は、
まさかそんなドラゴンに乗って飛ぶ騎士が出てくるとは思えなかったが、間違いなく強力な矢であるということだけは分かっていた。
故に、カナメとしても「あんなもの」が出てくるのはちょっと予想外だったのである。
「とにかく、もうちょっとこの
「空っていうか、地上もソレあれば制圧できるんじゃないの?」
「それはどうかなあ」
ハハッと軽く笑うカナメだが、事実この場に用意された
もし、このままの状況が続くようであれば何日でも防衛可能どころか反撃にすら移れるが……。
「……」
地上の
「おかしい、ですわね」
「何がですか?」
エリーゼの呟きに空の戦いを見上げていたイリスが疑問符を浮かべるが、カナメもまた矢を撃つ手を止めて同様の表情をする。
「イリスはともかく、カナメ様はご存知でしょう?」
「え、え。ごめん、何が? あの二人の事?」
「ではなく。敵の編成を見て気付く事がありませんか?」
言われて、カナメは戦場をゆっくりと見回す。
空にはカナメの竜鱗騎士達と戦う
地上には盾や斧を構えた
「……あれ?」
足りない。森の中にいたのは、
虫やら巨人やら……他にも居たはずだ。
いや、そもそも。
「確か、森で魔法攻撃を受けたよな……? この距離なら届くはずなのに、どうして撃ってこないんだ?」
「そう。あいつ等は
そもそも、どうして「数」で攻めないのか。
アリサの頭の中を巡るのは、この町の簡単な地形。
ぐるっと壁砦で囲まれたこのミーズに攻め込もうとするなら、どうしても何処かの壁を突破する必要がある。
一番戦力を隠せる森に面したこの場所が最も警戒するべき場所なのは確かだが、他に何か見落としがあるのだろうか?
そもそも、敵のこの布陣は何を狙っているのか。
「囮……? でも、アレがそうなら何処から」
呟くアリサの背後。町中から、何かが吹き飛ぶような爆発音が響いた。
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