日奔国

翡湊　梗

「衆議院を解散しよう」

　時の政権にある内閣総理大臣阿部慎太郎は、そう決意した。今後、衆議院解散の正式発表日まで、気を引き締めて臨もうと思い、眉間に皺が現れ表情が険しくなっていった。

　事前に副総理阿相太朗からの進言を受けていて、最新の世論調査による内閣支持率が急上昇した事も考慮すると、今がベストな解散時期だと阿部慎太郎は確信したが・・・

この日奔国は、議院内閣制の国であり、国会は4年任期の衆議院と6年任期の参議院に分かれており、衆議院で過半数を獲得した政党から内閣総理大臣を輩出する事が慣例になっている。

　内閣を構成する政党は与党と呼ばれ、それ以外の内閣を構成しない政党は野党と呼ばれている。野党第一党である民心党は代表者が代わり、党の体制を新たに構築したばかりであったが、党の顔役に目論んでいた山夫詩織議員の不倫報道により、支持率は下がり離党者も続々と発生している状況になっていた。

　内閣支持率が低下している数ヶ月前、等京都で等議会議員選が行われ、与党第一党である時民党は大惨敗し、古池由里子都知事が率いる等民ファーストの会が圧勝していた。

　等知事選で古池由里子都知事を応援していた若佐真佐留議員は、古池由里子都知事の応援を受けて新たな政党を立ち上げようとしていた。

　日奔国をとりまく情勢は、世界の大国であるアムリカ合衆国トレンプ大統領が連日世界のニュースで取り上げられ、北兆鮮国がアムリカ合衆国と挑発合戦を繰り返し、核実験や弾道ミサイル発射実験を行っている状況になっている。北兆鮮によって発射された弾道ミサイルは日奔国遥か上空を通過し、日奔国は解決策を模索している状況が続いている。

　次の衆議院解散において、世論の反応を確認するために、時民党は複数の新聞社に対して事前に情報を流すように画策し、正式発表は後日行うという手法を選択した。その結果、解散しなければ開催予定である臨時国会において、守友学園問題・科計学園問題の追及を避けられない事を、阿部慎太郎は改めて認識したのであった。

　昨今、守友学園問題・科計学園問題は、時の内閣総理大臣阿部慎太郎があらゆる面で深く関わっているとして、人々の注目を集めており、時民党議員の不倫報道や暴言報道に伴って内閣支持率が低下していた。第3次阿部第3次改造内閣で支持率を回復したが、今後の趨勢によって、支持率の更なる上昇は見込めない事は明らかになりつつあった。