第7話

 コンコン

「はい」

 扉をたたく音は兄さんと違って、少し早かった。誰かしら。

「牡丹様、希一です。入ってもよろしいでしょうか」

「どうぞ」

 希一……彼が一番紙本製造禁止令に反対を示している。そのことかしら。

「牡丹様。勝手ながら、我ら会員のみで揚羽様と胡蝶様の二大紙本作家に招待状を送りました。集会の」

 揚羽と胡蝶に……彼女たちはきっと来るわね。もう逃げられないってことかしら。過去に向き合えって、神様が言っているようだわ。

「牡丹様?」

「勝手なことを」

 ここは彼を怒らないと。希一は皆のことも考えて、彼女たちを招待することにしたのだろうけど。

「申し訳ありません。しかし、貴女に、牡丹様にいえ、ダリア様にすべてと向き合ってもらうためにも今回私たちはこのようなことをしました。」

「今……なんて……」

「我ら会員は知っています。貴女様が、紙本会代表の牡丹様こそが紙本伝説の作家ダリアだと」

 そんな……どうして……もしかして兄さん?

「聖様ではありませんよ。突如として現れた紙本会。そして、同時期に紙本作家活動を休止すると発表されたダリア。そしてあなたの言動。すべてが裏付けてくれたのです、貴女が伝説の天才紙本作家ダリアだと」

 兄様じゃない……まさか言動からばれてしまうなんて。覆面作家として活動していたのに。さすがは紙本好きのみんな。

「ダリア様。今日の集会、ほぼ確実に愛弟子の揚羽様、胡蝶様両名がそろいます。貴女は過去と向き合い、ステラ様を止めて下さい。そして、我らの娯楽を守ってください」

 まさか、ステラのことまでばれていたなんて。でも、これで逃げ場はなくなった。私が彼らの、紙本の歴史を、存在を守る。

「えぇ、もちろんよ」

 我が息子ステラ、貴方に許しを請うことはしない。でも、紙本の存在を容認するための許しは請う。

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