カクヨムがどうやって利益だすか知ってる?

ちびまるフォイ

1日1回の寄付で救える小説があります。

「さて、今日も投稿するかな」


サイトを開くと一番上に見慣れないバナーが表示された。


『カクヨムの皆様へお知らせがあります。

 カクヨムにコーヒー1杯(¥300)ほどの寄付をしていただければ

 今後もカクヨムは発展し続けることができます。

 あなたのほんの少しの援助をよろしくお願いします』


いくらスクロールしても流れてくる。

邪魔だとは思いつつも、さして害があるわけではないので無視していた。


翌日、カクヨムのサイトに訪れるとまたバナーが出た。


『カクヨムの非募金者にお知らせがあります。

 カクヨムは小説家と出版社を結びつける非営利活動を行っており

 それには利用者の少しばかりの援助が必要です。

 ラーメン1杯(\500)ほどの寄付で今後とも発展できます』


「……なんか増えてないか」


昨日見た時よりもバナーは大きくなっている。

大きくなったことで小説のタイトル部分や、内容の冒頭数行が隠れてしまった。


アプリゲームでも無課金の姿勢をとっている俺なので無視していつも通り投稿を行った。


翌日、カクヨムのサイトに訪れると

もはやバナーというサイズではなく1ページまるまる使って表示された。



『あなたにお知らせがあります。


 あなたがスタバで1杯(\700)ほどの寄付をするだけで


 あなたがスタバで1杯(\700)ほどの寄付をするだけで


 あなたがスタバで1杯(\700)ほどの寄付をするだけで


 カクヨムは今後も質の高いサービスができます。

 このままサービス終了してもいいんですか?

 あなたの小説が電子の海に消えていいんですか?


 寄付はあなたの小説下部ついているボタンからできます』



「ますます高くなってる!!」


しかも俺の投稿した小説の一番下に寄付のバナーが表示されている。

他の作品には寄付バナーが出てないので、俺が非募金だから表示されているのか。


「わかったよ! 寄付すればいいんだろ!」


毎回これを寄付を迫られるのもうっとうしいので寄付を行った。

これでもう大丈夫。



『寄付をしてくれたあなたにお知らせがあります。

 寄付をしてくれる方があまりにすくなかったため、

 あなたが東京ゲームショウ入場料金(\1000)ほどの寄付をするだけで

 今後ともカクヨムは質の高いサービスを続けられます』


「ってまた出てるんじゃねぇか!!」


寄付をしたからといってバナーが消えるとはどこにも書いていなかった。

こんなことになるなら寄付なんてしなければよかった。


さすがにもう寄付はしないぞと心に刻んで自分のマイページに行くと

フォロワーからメッセージが届いていた。


>小説が見れなくなっていますが、なにかしたんですか?


「え? 見れない?」


該当の小説を開いてみる。



This nobel has been deleted.



「なんじゃこりゃああ!!」


小説にはなぜか英字で削除を伝える旨の文字が表示されている。

カクヨム運営に慌てて連絡を取った。


「あの! 俺の小説が! 俺の小説が消えています!」


『いいえ、消えているわけではないです。

 寄付をしない悪質ユーザーは小説の投稿数に上限をつけました。

 上限以上の投稿にはこちらでフタをしています』


「な゛っ……」


『あなたがハードカバーの本1冊(\1200)の寄付をするだけで

 質の高いサービスができます』


「寄付しないと……どうなるんですか?」


『あなたが投稿している既存作品の主人公の名前が

 "うんこしたい"になり、語尾がすべて"~だす"になります』


「いやがらせか!!!」


『あなたがイヤホン(\1400)ほどの寄付をするだけで

 これらすべての制限はなくなり、カクヨムは質の高いサービスを――』


「ふざけんな! もうこんなのやってられるか!」


誰が払ってやるものか。

金に困っているわけではないが、横暴な態度にムキになってサイトを離れた。


寄付だなんだといってもサイトに行かなければいい。

俺以外の誰かが寄付してくれるだろう。


と、たかをくくっていた矢先にメールが届いた。


『あなたが髪を切る(\1600)ほどの寄付をするだけで

 あなた以外の人にカクヨムは質の高いサービスができます』


「しまった! メールアドレス登録していた!!」


さながらゴキブリのように網の目をかいくぐってやってくる。

すぐにメールも受信拒否してつかの間の平穏を手に入れた。


だが、今度はインターネットに接続するたびに寄付のバナーが表示される。


『あなたが洋服(\1800)ほどの寄付をするだけで

 カクヨムは質の高いサービスと、あなたの快適ネット生活を保証します』


「あ……ああ……」


『寄付をするだけで』

『寄付をするだけで』


寄 付 を す る だ け で!



気が付くと、パソコンの文字が文字に見えなくなっていた。

ゲシュタルト崩壊を味わって気分悪くなった俺は病院のベッドで目を覚ました。


「大丈夫ですか? パソコンを見ながら倒れるなんて聞いたことないですよ」


「同じような字面を見続けていたら、気分が悪くなってしまって……」


医者に薬と入院に際しての説明を受けた。

退屈しのぎにテレビをつけると、ニュースがやっていた。



『大手投稿サイト"カクヨム"にて悪質なサイバー攻撃がありました。


 ハッカーは運営を乗っ取り、寄付と称して利用者からお金を搾取。

 寄付をしない人にはハッキングで執拗な粘着行為を続けていました。


 現在は、本来の運営へと戻りセキュリティ面の見直しも行っています』



「は、ハッカー!?」


いままで張りつめていた緊張感がどっと抜けた。

今までの寄付はすべてハッキングだったのか。


思い返せば、たしかに不審なところはいくらでもあった。


カクヨムは本来の運営に戻ったしこれでもう安心だ。

俺はいつも通りカクヨムに訪れた。





『カクヨムは利用者に高品質のサービスを提供するため、

 月額定額制になりました。

 利用には月額2000円の支払いをお願いします。


 カクヨム運営』

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