魔法収集冒険
にぃつな
第1話 終わりと始まり(1)
罪を犯し、友を失い、暗い牢獄の中へ長らく封印されていたとき、ある人がぼくに呼びかけてくれたおかげで暗く閉ざされた物語が開くことができた。
ことの始まりは、今から800年前、まだ魔法の研究・開発が行われていた時代。かつて魔道士ラスベルと呼ばれていた。名をつけたのはぼく自身ではないのだが、世間からは「偉大なる開発者ラスベル」、「魔法文明を発達させた魔道士ラスベル」とあげられていた。
そんなことは特に気にせず、いつも好きな魔法開発に人生すべて捧げて励んでいた。
ある日、友のカティアと一緒にまだ誰も成功していない転移魔法や時空魔法を作ってみないかと持ち掛けた。もちろんカティアは喜んでと一言で引き受けてくれた。
開発に資金や職員、資材などが必要となるのだが、カティアもぼくと同じ魔法研究科でもあったため、資材や資金は無になるほどまでの底が深かった。
職員は友のカティアただ一人。他の誰かに奪われたり時間かかったりするのは嫌で、唯一無二のカティアのみを仲間として仕事することに決めていた。
開発するのは予想以内にかかった。40年以上はかかる見通しだったが、カティアの意外な魔法文字の解読、ぼくが見つけたマナと時間の関係などを組み合わせたことによって10年と比較的に短い時間で魔法を作り上げることができた。
一つの本としてまとめ終えたときには、窓の外では5年に1回の[星まつり]が行われていた。[星まつり]は、古代の王が豊作を願って、星たちが運ぶ生命を地表へ舞い降りてくれるのを願った祭りである。
最初は王と国民だけの願いを込めるだけの沈黙の儀式だったが、いつしか人を呼び、願うものが増えるにつれ祭りと称して祝杯されるようになった。
もちろん、[星まつり]で星が去年よりも多く降れば、今年は豊作なのだとか…と言われている。[星まつり]に行われる星には数年前にカティアの発明した[命の魔法]によって、隕石としては無害の生命魔法として地に降らすことに成功した。
世間では公表されていないが、宇宙から隕石が降ってくるのは危険で大半は山や海等に落ちているが稀に人や動物が住む地表に落ちることで被害があったため、カティアと共同作業で生命の誕生として魔法を作ることに成功した。
自然エネルギーとなるものを魔法の粉もしくは液体に変え、地表に降らす。魔法の作り方はそれを毎回祭りを仕切る人限定に本を託し、それを行ってくれる。
ただ、ぼくらは研究者として知名を上げずに、ただ研究することを目標にぼくらは、生命の魔法を作ったとしても、資金を彼らからもらうことを拒否していた。
[星まつり]を軽く見やった後、本命の魔法を発動することにした。
カティアが儀式となる文字を描き、ぼくはそれを数式として宙に描くことの繰り返し。最初は本にするためだけでも限度はある。
本すべてにまとめても解読できる人、素質がある人でなければ実行できないものが多い。それを短縮するためにあらゆる方法を駆使しながら一般人でも扱えるように工夫しなくてはならない。
本に書き込むにしても時間もかかるが、実際に実行して成功しないこともあるので、本に書くやり方と初めに作った人のやり方を交互に執り行いながら進めていく必要があって、それはそれでかなり面倒だが、そのときのぼくらはテンションが上がっていただけあって苦にはならなかった。
魔法を発動する準備を終えるなり、ぼくらは魔法名を唱えた。
するとまぶしい光が家を包むなり、ぼくらは家の外へ投げ出され、周りは砂埃と所々赤く燃える箇所がちらほらと見え、その場で意識を失った。。
気が付いたときには、ぼくは裁判所のとこにおり、裁判が行われていた。何が起きたのかわからないまま、裁判は続いており、ぼくは問われる内容に対して何も答えず、ただ無口で頷くだけでいた。徐々に意識が戻ると同時に、ぼくが犯した魔法実験は、裁判官から「爆発物を作った」と言われて初めて気づいた。
「違う」
と、ぼくは言ったが、裁判官はぼくの言うことを無視し、そのまま継続した。結果、ぼくは爆弾を作るだけでなく、〔星まつり〕に参加していた多数の犠牲者とその土地に永久的に住めなくなってしまったことを伝えられ、愕然とした。
ぼくは、ただ魔法を作って友…カティアと一緒に喜ぶつもりだった。「いままで到達したことがない時空魔法だ」と浮かれていながら。
当時は、人や自然に有害物を与える魔法は禁止しており、ぼくらが放った魔法もそれに打倒してしまっていた。
ぼくらが創った魔法は結局のところ[爆弾作り]とみなされ、ぼくの建言は断られ、地下の牢獄の城へと封印されてしまった。
ぼくはしきりにカティアはどうなったのか訴えていた。それをこたえてくれたのは他者ではなくぼくが最後に見た映像(レコード)によるものだった。
封印される4時間前、ぼくが記念にだと録画しておいた映写機が奇跡的にカティアの魔法で大爆発による影響は起きていなかったようで無傷だったのが幸いした。
2人で魔法名を言った瞬間に光に飲まれ、爆風と共に映写機が外へ飛び出していったのが見えた。研究室だった建物は無残に粉々に散り、黒い煙とキノコ上の煙が何度もその場から噴き出ていた。異常な光景だった。
ぼくは、カティアに向かって手を伸ばしている映写があった。
カティアはもがきながら、異次元の穴と呼ばれる危険な産物に飲み込まれる瞬間だった。結局のところ、ぼくは何もできずにその場で顔を地面に向け、手足は動かなくなっていた。
カティアは必死で何か叫びながら、時空の穴の中へと消えていった。
[星まつり]もあったため、近隣の町や村は壊滅。大爆発の繰り返しで人や動物は無残な姿に変わってしまい、地表は荒れ果て、なにがあったのか現地の人でさえ判別できないような世界が広がっていたのだ。これは、映写機から様子が見て取れた。
ぼくはなぜか無傷であった。
きっとカティアがぼくに映写機と同じように防壁魔法をかけてくれていたのだろう。
異次元の穴へと消えていったカティアの行方を捜したくて、[大爆発]の影響で変わってしまった地表を取り戻したくて、自ら現場に戻って回復のめどを治したいと訴えた。
けど、聞く耳を持つ人は誰もおらず、しまいに無言と白い眼だけがぼくを無数に照らしていた。責任はぼくたちなのはわかっているけど、回復のめどが立っても…失くした人たちはどうなる? 彼らはそれで気が晴れるのか? それは不可能だ。
爆弾という恐ろしいものを作り、地表も人も動物も変えてしまったもの再び現地に戻すなど気が狂ったことはしない。
彼らはみんな、殺せではなく、あえて「不死」という言葉を流していた。
不死は死よりも恐ろしい罪。何十年、何百年、はたまた何千年と行き、空腹と痛みで過ごす異なる。しかも、魔法も知識も日にかけ、しまいには魔法も自分で行動できない体へと変貌してしまう。無期刑や死刑よりも最も重い罪だ。
ぼくは不老不死にし、長い間、暗くてジメジメした湿気の中で何も喰わずに生きるという苦なる地獄を与えられた。
眠るいこともなくことも食うこともできないまま、空腹と世間からの冷たい視線に耐えつつ、長い間一人で城に囚われることになってしまった。
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