ローズ・オブ・マリー

カゲトモ

1ページ

 眠りの底から引っ張られるようにして意識を取り戻す。目蓋を開くとカーテンの隙間から朝日が差し込んでいるのが見えた。

 眠っているのと意識を失っているのはどう違うのだろうと考えたことがある。ほぼ同じじゃないだろうか。夢も見ていないような眠りから覚めた時は、夜から一瞬にして朝になったような、まるで自分だけ時間に取り残されてしまったような気分になる。そんな訳はないのだけど。

「ふぁぁぁあ」

 でかいあくびをして首を回した。昨日は疲れてそのままソファで寝てしまったらしい。身体が痛い。

「とりあえずシャワー・・・」

 机の上をそのままにして風呂へと歩く。本当は湯船に浸かりたいくらいだが、今から入れるのは面倒だし、シャワーで済ます。

 昨夜は店から帰って新しいメニューを考えていたはずだが、いつの間にか寝落ちしていたらしい。その割には比較的目覚めが良い朝だ。

 今日は店の定休日。時間もたっぷりあるから勉強も兼ねて最近できたカフェへ行くつもりだ。若い子向けのパンケーキの店から常連向けの純喫茶、安い居酒屋や、お高めのレストランなんて何か俺自身に影響を与えてくれそうなところには時間を見つけて赴くようにしている。音楽や芸術、演劇なんかもその中に含まれる。

 まぁそれが全てプラスに働いているかと訊かれれば首を縦に振ることは出来ないが。

 たまに変なのを作っては斉藤君に微妙な顔をされるし。

「そんなにまずかったかなぁ」

 なんて、この前作った抹茶ベースのカクテルを思い出す。ぜんざいを混ぜたのがダメだったのだろうか。

「お汁粉ならいけるのか?」

 また斉藤君に味見をしてもらおう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る