3ー完.行きつけのお店に強制調査

 たとえ異世界といえども年数を重ねれば顔なじみも出来るし、行きつけのお店なんかも出来る。


 その一つがここ。【食事処――】である。


 名前が消えている。もしくは消したのか。


 ネオン街から引っ張ってきたような、どぎつい色の文字が躍る看板。


 ~三千円ポッキリ~


 文字が流れていく。


 もしこの看板が事実ならとんだぼったくり店舗であることは間違いない。

 三千円の定食なんて食ったことない。

 世の中にはあるのかもしれないが、高級品であることは間違いない。


 しかし、それはありえない。調理師免許も持たない男の料理が三千円もするわけがない。


 ~いい子そろってるよ~


 元々この看板があった店もぼったくり臭がすごい。


 ネオン街、もしくはそれに類するところにあったのだろう。

 行ったことないけど……たぶんそう。そうに違いない。


 こんなメチャクチャな看板を掲げておきながら、この店は意外と人気がある。


 まあ、こちらの人々が看板に映し出される文字を読めないからいいようなものの、読めたら景観法とかそんな感じの事で間違いなく罰せられるぞ。


 この世界に景観という概念があればの話だが。


 この世界の景観にはそぐわない店のドアに手を掛ける。


 開けて中へと入る。


 ――カランカラン。


 ドアの上部についた小さな鈴が私の入店を知らせる。


 店を出る客とすれ違う。


「いらっしゃいませ……」


 固まったウェイトレスへと近づき、肩を掴む。


「反省文な」


 そう告げると、ウェイトレスは肩を落とし項垂れた。


 後は……。


「お前たち、ユリ先生のクラスの奴らだろ? こんなところで何してる? 卒業試験控えてるだろ。まさかとは思うが、勇者のアルバイトなんかで小銭稼ぎしてないよな? 最近、そんな噂を小耳に挿んだものでな……。

 卒業間近の奴らなら知ってると思うが、担任に申請していないアルバイトは校則違反だ。卒業はさせん。

 ただ、俺も鬼じゃない。一緒に謝ってやるからついて来い」


 そして(店には)誰もいなくなった。



 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ※最後の〆方がやりたかっただけで、この話を書きました。元ネタは勿論、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』です。

 ネタが思いつかない時に過去の名作のお力(フレーズなど)をお借りして執筆しています。

 次の話もなんとか捻り出してみせます。



 次回はこの話の続き書こうかと思っています。

 単独でも成立する話になるは思いますが……


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