第1章 人間界へ
「ママ、今日もいじめられたぁ!!」
ルビは、半べそをかきながら家の玄関を開け、駆け足のまま中に入った。
「どうしたの、ルビ、そんな駆け足で帰ってきて、いきなり。」
そして、ママのクレアの胸の中に飛び込んできた。
「
※
ルビは今年で12歳。
この死神界の小学生、もう来年には卒業という
帰ってきたルビは、黒いとんがり帽子に黒い
これがこの世界での正装。
でも、家の中では普通にラフにみんな生活している。クレアもシャツにストレッチジーンズみたいなパンツはいてリラックスしていた。
「お友達に何言われたの?」
とクレアが聞くと、
「また、名前と身長のことで冷やかされた・・・・・・。」
と、クスンと鼻をすすりながら答えた。
「みんな『女の子みたいな名前だ』とか『ちびルビ』とか言って取り囲むんだもん。」
確かに、ルビは学校で一列に並ぶと、一番前のちびっこだった。
ルビはクレアの胸からはなれ、改めて見つめなおした。
髪はブロンドのロングの髪に、軽くウェーブをかけていた。
やせてもなく太めでもなく、でも出ているところは立派に出ている、モデル並みの体系だった。
顔も整っていてとても美しかった。
ママは一番だなあ、なんてもう違うことを考えていると、クレアが、
「そんなの
「男の子でしょ。」
と
ルビはまたうつむいてしまったが、
「わかったよ、次は負けないよ・・・・・・たぶん。」
とビミョーな返事をした。
クレアも最後の“たぶん”の一言で気持ちが“ガク”っときた。
「そうそう、ルビ。」
クレアは思い出したようにルビに話しかけた。
「今度の日曜日、ママと一緒に人間界に行くのからね。」
「え!」
「いきなりなんで?」
「今はパパが人間界でのお仕事でまだお家に帰ってこないから、13歳の卒業の
そう言われると、ルビはちょっと
でも、ルビにとって今生活している死神界からそとにでるなんて初めてのこと、しかもいきなりママに言われてちょっと
※
ルビとクレアは死神界の通用門の前にいた。
ルビはおっかなびっくりだった。
両側に
そして、天井の中央に左右の
ここまで、家から30分ほどした山中に入った所だった。
「ほんとに行くの?」
ルビは繰り返しクレアに
「もう、ルビ、男の子なんだから堂々として!」
「うん、わかった!!」
今までとは違う少し張りのある声で、今度は返事をした。
「じゃ、行きましょう。」
と、クレアは言うとルビの右手を取って門の中に入っていった。
山の斜面にできているその門は、黒い水が上から滝のように流れているように見えた。
そんななか、ルビは自分も入る
「ぬれて真っクロクロにならないかな?」
「あ!」
「でも目立たないや。もともと黒だもん。」
「あははは。」
という、ルビ独特の空気の読んでなさを持ちながら、人間界へと向かっていった。
※
ついたところは、○○県の県立病院の小児病棟だった。
「ここは、人間界のドコ?」
ルビの質問に、クレアは静かに答えた。
「ここは日本っていう国の病院ってところよ。」
「小学校で習ったでしょ、ルビ。」
ルビは『いかにも習って覚えていますよ。』という
「うん!」
「人間ってここで病気を治したり、死んだりするんでしょ。」
「だから、僕も大きくなって、“
「よろしい。よく覚えていたわね。」
クレアがほほ笑む
「じゃこっちよ。」
クレアはスタスタと
ナースステーションやフロア
ルビは人間さんに見つかるんじゃないかとドキドキしっぱなしだった。
「ママ、人間さんに見つからない?」
と聞くと、
「ルビ、覚えていないの?通常は人間界の人々は私たち死神界の者たちは見えないし、話している言葉も聞こえないのよ。」
「ごくまれに見えちゃう人もいるけれどね。まれよ、まれ。」
クレアはルビにウィンクした。
「そうなんだ!!」
ルビの表情は“パア”と明るくなって、目の前にゆっくり歩い来るナースに向かってアッカンベーをした。
ナースは何事もなく歩いてくる。
「ほんとだ!!全然気づいていないや!」
そう確信すると今度は堂々とナースの前で大の字になって飛び
ドカ!!
とぶつかってしまった。
二人とも大きく
クレアは頭を
「なにやってるのよ・・・。」
「ルビ!!」
クレアが
「ハイ!!」
と
ルビはわかっているのだ。
「ゴ・メ・ン・ナ・・・・・・サイ!!」
と言ったと同時に頭を下げた。
クレアはルビが分からない程度にクスクス笑っていた
クレアはルビのことが大好きでしょうがないのだ。
ぶつかったナースはきょろきょろして、いったい何にぶつかったのか分からず、何か不安な気持ちになったみたいだった。
ちょっと青ざめた顔で、早歩きでその場を去ってしまった。
クレアは、
「人間界の物質にはぶつかってしまうのよ。」
「もう少し大きくなって通過呪文を習ったら、人間界の壁でも、ドアでも、人でも、なんでも通り抜けられるわ。」
「ふ~ん、そっかあ。」
そう言うルビの表情にちょっとクレアは
「甘やかしすぎたかしら?」
クレアは右手の親指と人差し指であごをつまみ、ちょっと首をかしげたのだった。
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