魔術師の日常
卯堂 成隆
狂犬の部屋
第1話 夢路より呼ぶ声
1: 通りすがりのホラー好き 投稿日:20xx/08/06(木) 22:11:21.40 ID:yRDQEZ8aa.n
S市にある『狂犬の部屋』って、誰か知ってる?
2: 通りすがりのホラー好き 投稿日:20xx/08/06(木) 22:12:36.69 ID:yereDQnb0.n
>1 シラネ。 聞いたこと無い。
3: 通りすがりのホラー好き 投稿日:20xx/08/06(木) 22:13:04.13 ID:bLhE4zUH0.n
>1 知ってるけど、絶対に行くな!
あそこはガチであかん。
5: 通りすがりのホラー好き 投稿日:20xx/08/06(木) 22:15:35.44 ID:zEvAH1rrd.n
S市の駅の近くにあるマンションだっけ?
聞いたことはあるけど、どんな場所かはしらない。
6: 通りすがりのホラー好き 投稿日:20xx/08/06(木) 22:22:03.67 ID:bLhE4zUH0.n
>5 正しくはその建物の中にある部屋な。
知り合いが業者にだまされてそこに引っ越したんだけど、その日の夜中に俺のところに逃げてきた。
完全にパニック状態で、なんとか落ち着いたあとに話しを聞いてみたんだが、夢の中で巨大な犬に襲われたらしい。
それで体中が痛いというから傷の手当をしようとしたんだが、服を脱いだらそいつの全身に何かの噛み跡みたいな黒い痣がついていた。
そいつはそのまんま別のマンションに引っ越して行ったよ。
あそこは本当にヤバいから、絶対に関わるな!!
7: 通りすがりのホラー好き 投稿日:20xx/08/06(木) 22:31:20.15 ID:yRDQEZ8aa.n
>6 kwsk
8:通りすがりのホラー好き 投稿日:20xx/08/06(木) 22:52:44.41 ID:EorOBU9l0.n
ペット密輸業者が狂犬病にかかって死んだ場所。
北米産のリスを密輸したんだけど、そのうちの一匹が狂犬病にかかっていたらしい。
で、そのリスが逃げ出して、そこにいた生き物と自分自身が全部狂犬病に感染。
その部屋の住人と急に連絡が取れなくなったんで仲間が様子を見にきたら、全身が獣に食いちぎられた状態で死んでいんだそうだ。
しかも、口にはグチャグチャになった生き物の死体が詰まっていたらしい。
それ以来、その部屋に引っ越してきた住人は、夜中に犬のような何かに襲われ三日もせずに逃げ出すそうだ。
中には無理やりその部屋に居座り続けたせいで、死んだ人間もいるらしい。
9:通りすがりのホラー好き 投稿日:20xx/08/06(木) 23:03:25.19 ID:yereDQnb0.n
>8
作り話乙。
日本に狂犬病はありませーん。
それが本当だったら、大騒ぎになっているだろ。
はい、論破。
10:通りすがりのホラー好き 投稿日:20xx/08/06(木) 23:15:20.09 ID:+2x1GKU99.n
>9
……北米のリスを密輸って書いてあるだろ。
文章をよく読め。 バーカ。
**********
明晰夢というものをご存知だろうか。
夢の中であることがわかっていながら見続ける夢の事で、場合によってはその夢の中で神のように自在に振舞うことの出来る人もいるらしい。
だが、俺……
その悪夢は、いつも地を震わせるような長く低い遠吠えから始まる。
あぁ、またあの夢だ。
俺はやがて訪れる苦痛を思い、夢の中で小さく身じろぎをする。
目の前は闇に包まれていて何も見えない。
黒一色の世界の中で、俺の中の恐怖をかきたてるように遠くから、ハァッ、ハァッ、と荒い息づかいが近づいてくる。
人のものではない。
……たぶん犬かそれに近しい何かだ。
やめろ、やめろ、くるな!
俺の願いもむなしく獣の吐息は次第に大きくなり、やがて落ち葉を踏みしめるような足音が混じりはじめる。
たのむ、こないでくれ!
夢の中では目を閉じることもできず、やがて闇の中に不吉な金色の光が見上げるほどの場所に灯った。
瞳孔が縦に裂けた獣の目だ。
あぁ、まただ。
それは愉悦を感じさせる低い唸り声と共に顎を開く。
自分の指先すら見えない闇の中で、なぜかその大きく開かれた口と赤い舌がはっきりと認識できた。
生臭い風と共に鋭い牙がむき出しになり、その白さが目に焼きつく。
そして……。
その巨大な気配がさらに近づく。
奴の視線は、俺の左腕に注がれていた。
やめてくれ……いやだ……いやだ! いやだ! いやだ! いやだ! 嫌だ! イヤだ! イヤダ! クルナ!! コナイデクレ!!
イヤアァァァァァァァァァァァァァ!!
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
かばう暇すら無く俺の左腕に激痛が走り、俺は絶叫と共に布団から体を起こした。
「また……夢か」
ベッドの横においた時計をつかんで文字盤を見れば、現在時刻は午前零時をすぎたばかり。
カーテンを閉め忘れた窓には街明かりに照らされた低い雲がたなびいており、月はおろか星のひとつすら見えなかった。
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