傲慢な若さ(短編)

YUUKA

今年田舎から出て来たばかりだと言った大学生の連は可愛かった。


30歳に今年手が届くと言う年齢で、バツイチでもある私にとって、

彼は息子のように可愛い存在だった。


それでも10歳程度の年齢差だったらまだ男女の仲になるに十分の近さ。


「こんな簡単に私の部屋に来て、彼女に怒られない?」


私が誘うまま部屋に上がってきた連。

彼に麦茶を入れながら、それとなく彼の周辺を探る。


連は大きな瞳をさらに大きくして私を見つめる。


「彼女がいたら聡美さんの部屋に来たりしないよ」


「そう」


思ったより硬派なんだ……なんて、感心したり。

私が母なら、こんな男の子に育てたかったなと思ったりした。


「それよりさ……一人でマンション買っちゃうなんてすごいよね」


20階建ての大型マンションに住む私に、尊敬の眼差しが注がれる。


「別にすごくないよ。ローンはあと20年あるし……財産にもなるかどうか」


こんな大人な会話、連とはしたくない。

お金の事なんて今は忘れていたいのだ。


「それより、ねえ……汗かいたでしょ。シャワーでも浴びてきなさいよ」


綺麗にたたまれたバスタオルとフェイスタオルを連に持たせ、バスルームに誘導する。

6月の蒸し暑い梅雨時期だ。

お互いしっとりと汗をかいている。


(このまま抱き合うには不都合でしょう?)


こんな無言のメッセージを連が受け取ったのかどうか分からない。

それでも彼は言われるまま着ていたシャツを豪快に脱いだ。


「……」


「聡美さん、どうしたの?」


私は言葉もなく、連の美しい半裸に目を奪われていた。

無駄な肉などいっさいついておらず、水を強引にはじき返す艶のある肌。


「若いね」


それだけ言った私に対して、馬鹿にされたとでも解釈したんだろうか。

連は憤然とバスルームに一人で消えて行った。


振り返ると、窓の外を飛行機雲が一筋線を引いているのが見えた。

私は汗をかいたカップを手にして、中に入っていた麦茶をゴクリと飲み下したのだった。


終わり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

傲慢な若さ(短編) YUUKA @nyao_i

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る