傲慢な若さ(短編)
YUUKA
■
今年田舎から出て来たばかりだと言った大学生の連は可愛かった。
30歳に今年手が届くと言う年齢で、バツイチでもある私にとって、
彼は息子のように可愛い存在だった。
それでも10歳程度の年齢差だったらまだ男女の仲になるに十分の近さ。
「こんな簡単に私の部屋に来て、彼女に怒られない?」
私が誘うまま部屋に上がってきた連。
彼に麦茶を入れながら、それとなく彼の周辺を探る。
連は大きな瞳をさらに大きくして私を見つめる。
「彼女がいたら聡美さんの部屋に来たりしないよ」
「そう」
思ったより硬派なんだ……なんて、感心したり。
私が母なら、こんな男の子に育てたかったなと思ったりした。
「それよりさ……一人でマンション買っちゃうなんてすごいよね」
20階建ての大型マンションに住む私に、尊敬の眼差しが注がれる。
「別にすごくないよ。ローンはあと20年あるし……財産にもなるかどうか」
こんな大人な会話、連とはしたくない。
お金の事なんて今は忘れていたいのだ。
「それより、ねえ……汗かいたでしょ。シャワーでも浴びてきなさいよ」
綺麗にたたまれたバスタオルとフェイスタオルを連に持たせ、バスルームに誘導する。
6月の蒸し暑い梅雨時期だ。
お互いしっとりと汗をかいている。
(このまま抱き合うには不都合でしょう?)
こんな無言のメッセージを連が受け取ったのかどうか分からない。
それでも彼は言われるまま着ていたシャツを豪快に脱いだ。
「……」
「聡美さん、どうしたの?」
私は言葉もなく、連の美しい半裸に目を奪われていた。
無駄な肉などいっさいついておらず、水を強引にはじき返す艶のある肌。
「若いね」
それだけ言った私に対して、馬鹿にされたとでも解釈したんだろうか。
連は憤然とバスルームに一人で消えて行った。
振り返ると、窓の外を飛行機雲が一筋線を引いているのが見えた。
私は汗をかいたカップを手にして、中に入っていた麦茶をゴクリと飲み下したのだった。
終わり
傲慢な若さ(短編) YUUKA @nyao_i
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