First love
その家の前を通る時、いつも緊張していた。
小、中、高と少しずつ通学距離が直線上に伸びていった私にとって、その家は毎日通らなければいけない場所だった。
その家に住んでいたのは、二つ年下の男子。私の、好きな人。
私が小学五年の時に転入してきた彼は、口が悪くて乱暴で生意気で……なのに何故か馬が合って、転入初日で呼び捨てにし合うほど仲良くなった。私がお転婆だったこともあるかもしれない。
自然に、自分らしくいられる相手。楽しい友達。
そう思っていたから、正直な所いつから好きだったのか判らないし認めたくもなかった。
だから彼に好きなコが出来た時はからかったし、彼をかっこいいと言う人には「そう?」なんて返してた。
自分の気持ちをはっきり自覚したのは、中学に進学して。
嫌でも気付かされる二つの年の差。三年の私と一年の彼の間には、見えない壁。
昔のように話すことも出来ず、彼の家で偶然会うこともない。
会ったらどうしようなんて、緊張しながら歩いていた日々は遠い。
一度だけ学校で嫌なことがあって文句を言いながら帰っていた時に会ったけれど、何もなし。お互いの視線が合っただけ。現実なんてマンガのようにはいかない。
そんな風になっているうちに私は高校に進学し、彼は引っ越していった。
もうあの家の前を通っても彼はいない。この町にもいない。
残ったのは胸の痛みと、誰と付き合っても彼以上に好きな人は出来ないという事実。
でも、もう終わりにしよう。
今はまだ無理かもしれないけど、いつか笑って懐かしいと言える日が来るように……。
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