イタミ



 切なくても、苦しくても……キミが好き。



 移動教室からの帰り道、廊下を歩いていると前からキミが歩いてきた。

 それに気付いた私は、ほんの少し表情が強張った。

 キミも私に気付いて一瞬表情が変わったけど、何もないかのように友達との会話に戻る。

 私もまた、友達と話し出す。意識をキミの方に向けつつ。


 少しずつ、少しずつキミとの距離が縮まっていく。


 すれ違った私達は、お互いを視界に入れていない。まるで相手を知らないかのように、赤の他人であるかのようにただ通り過ぎる。

 胸がズキンと痛くなったのは、きっと気のせいじゃないだろう。

 もしも、今私が一人で歩いていたなら……立ち止まって遠くなるキミの背中を見つめたかもしれない。

 もしも、私達の関係が昔のようだったら……姿が見えた時に声を掛けたかもしれない。


 けれどそのどちらでもないから。


 二人の距離はどんどん広がっていく。



 いつからこうなってしまったのだろう。昔は仲の良い幼なじみだったはずなのに。

 そう。私達は幼なじみだ。別に、恋人だったわけじゃない。今も昔も、その事実が変わることはない。

 そして私が幼い頃から抱いているこの想いも、変わらない。


 何も変わっていないはずなのに、距離だけが出来てしまった。




 この心の距離が、悲しい。




 この想いが届かなくてもいい。

 ただもう一度だけ、笑い合いたい……。






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