宵闇
私には、幼い頃から1つの癖がある。
四時……か。
ふと目が覚めた私は、壁時計で時間を確認して小さく溜め息を吐いた。
こんな時間に目が覚めたら、もう眠れない。
ベッドから降り、ベランダに出る。
「さむ……」
パジャマの上にカーディガンを羽織っていても、外に出るとやっぱり寒い。
ベランダの手摺りに寄りかかり、まだ暗い街の景色を見つめる。
ここは空と大地の間で……小さな私はそこに佇んでいる。
こうしていると、この世界に私独りきりみたいだ。
瞬く星も月明かりも夜が在るから輝いている。だけどね、私は全てを飲み込みそうな夜が怖いんだ。
だから、小さい頃から目が覚める度に朝が訪れることを一人で祈っていた。それはもう儀式に近くて……自分がここに存在していいのか判らなくて……辛い時間だった。
そんなとき、彼と出会った。
正確には、生まれたときから隣に住んでいる幼なじみだから“出会った”という表現は間違っているのかもしれないけれど。
私は、隣の家のまだ暗い彼の部屋を見た。
「まだ、寝て………」
“るよね”と続けようとした瞬間、そこのガラス戸が開き彼が出て来た。
「おはよ……かな?」
「どうして……?」
「何となく、お前がいる気がしてさ」
よっ、と手摺りを乗り越えてこっちのベランダに乗り移ると、私の隣に来て顔を覗き込んでくる。
「また、見てたのか?」
「うん……」
夜が怖くても、イイコでいるために両親に言わず独りで耐えていた私。
「泣いても、いいんだぞ?」
「さすがにもう泣かないってば」
そうは言ったけど、彼の優しい声と表情に何故か泣きそうになってきて……。
私は俯いた。
彼の手がゆっくりと頭を撫でていく。
ずっと、涙を堪えてきた。けどもう、涙こぼしてもいいのかな?
この先何が起きたとしても、キミはそのまま変わらずに……そう、笑顔のままで一緒にいてくれる……?
もしそうなら、私は……。
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