臆病 (勝手にお題【ごめん、愛してる】パターン3)
「え、今何て言った?」
目の前の彼は、あまりに突然のことでひどく驚いているみたいだ。
まぁ、それもそう、か。そんな様子、微塵も見せなかったし。
だけどね、ずっと前から決めてたんだ。
「だから、“もう無理。別れよう”って言ったの」
なるべく、面倒くさそうに言う。
本当は嫌われたくないけど、さよならするためだったらそれもあり。
「なんでだよ! 理由を言えよ」
「理由なんて特にないわ。ただ、一緒にいても楽しくないし疲れるだけだから」
「なん……だよ、それ。そんなんじゃ、納得出来ねーよ!」
「納得してもらうつもりなんてない。話はそれだけだから。さよなら」
私はベンチから立ち上がり、歩き出す。
後ろから私の名前を叫ぶ彼の声が聞こえたけど、振り向かない。ううん、振り向けない。
だって、私の目からは止めどなく涙が溢れているから。
私だって、好きだよ。別れたくなんかないよ。だけどきっと無理だから。
私は明日、転校する。
このことを知っているのは、学校以外だと親友1人だけ。他の誰も知らない。そう、彼ですら……。
湿っぽくなるのが嫌だから言わないなんて言ってたけど、実際は離れがたく感じてしまうから。
話さなければ、そんなことにはならない。
私達はまだ子どもで、世間の理不尽さに打ち勝つ力なんて持っていなくて、ただ悪あがきすることしか出来ない。
どうか、私のこと忘れないでね。ううん、忘れて……?
『今度再会する時は、笑顔でいられるといい』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます