エキストラエピソード シャフト選挙戦シリーズ
第1話「シャフト選挙戦 プロローグ」
話は民主主義国シャフトで行われた選挙戦に戻る。
田中鋼華はシャフト攻略のために選挙戦を行うことを決めた。
民主主義国シャフトには、現在の与党である自由責任党と平和民主党の二つが存在し、鋼華の作戦は平和民主党の人間を勝たせて、魔族の思う通りの政治を行わせることであった。
そのためには二つ、平和民主党の篭絡と、マスコミ対策が必要である。
そう考えた鋼華は、5人のサキュバスをシャフトに派遣することにしたのだ。
場面は、5人がシャフトに送られる直前のコルド帝国ファウスト要塞である。
「ごめんね、結局私はシャフトにいけないことになっちゃって。」
ルーシアは、サキュバスたちに申し訳なさそうにしていた。
「お姉さま、気にしないで。今まで辛かった分、もう幸せになっていいのよ。」
とベベルの妹、フレアーがルーシアを気遣って言った。
「わ、私は別に今まで辛いと思ったことないわよ。」
「とうとうゴーガ様と結ばれるね。やったね。」
美脚のセーラムはルーシアと同世代でルーシアの一番の親友である。
「ゴーガ様がルーシアをそんなに気に入ってたとは意外だったけど、私らとしては一人の男に縛られるなって辛いねぇ、ぞっとしちゃう。ルー姉は我慢できるの?」
そういったのは、年下だけど正直な物言いが特徴の、
バイオレットの言うとおり、サキュバスにとって男と関係を持つことは食事であるので、一人の男に忠誠を誓うということは、人間でいうところの毎日同じものを食べるようなものである。特にバイオレットは飽きっぽいのですぐ、いろんな男を試してみる性格であった。
「うん、まぁ。私、カレーだったら毎日でもOKな人だし。」
昨晩、ルーシアは鋼華に「サキュバスっていうことはわかってるが、俺以外の男とは絶対寝ないでくれ」と懇願されたのだった。
ルーシアには魔王がなぜそんなことを言うのか理解できず、困惑していたが、魔王の申し出でもあるし、何度も愛してると言われるので、とてもいい気分でそれを了承した。
愛してるといわれたことは何度もあるが、魔王にテンプテーションをかけた覚えが一切なかったので、それが心の底からのものであると知っていた。
「私も魔王様の相手したかったのになぁ…。」
ハーモニーが残念そうにいう。
「ハーモニー相手じゃ魔王様も疲れちゃうよ。」
バイオレットはハーモニーに突っ込みを入れた。
「何よ、バイオレットなんてブスだから相手してもらえないよ。」
「誰がブスだよ。ロリコンにしか相手にされねえやつに言われたくない。」
この二人は同期でいつもケンカばかりしてるが、一番仲の良い二人である。
「もう二人とも美人だから、ケンカしないでね。」
フレアーが仲裁にはいる。この中ではフレアーがまとめ役のようである。
フレアー、セーラム、バイオレット、ハーモニーの4人にくわえ、ルーシアの代わりの新人のペシェがシャフトに送られる。
「みんな頑張ってきてね。」
ルーシアは自分だけが愛を受けていることに罪悪感を覚えてみんなを送り出した。
もちろん、魔族が正面から入国はできないので、コルド皇帝の外交ルートを通じて5人は入国する。コルド皇帝から、平和民主党への贈り物ということであれば、ノーチェックで貨物船から国内に入ることができるのだった。
最も荷物扱いなので、5人は箱詰めにされてしまう。よくあることなので、バイオレット以外は不平は言わなかった。
ちなみにコルド皇帝はすっかりベベルのとりこであって、ベベルのいうことなら何でも聞いていた。ベベルがちゃんと皇帝の仕事をしなきゃだめだというので、国民の食糧、燃料の確保を優先的に行い、軍の教育もしっかり行いだした。
また、魔族のイメージアップキャンペーンを行わせ、定期的に交流を図ることで、魔族と軍による合同軍事演習を行うようになっていた。多くのものは混乱のうちにそれに慣れていったようである。
国王の判断に疑問を呈す大臣もいたが、それまたベベルによって懐柔されていった。
これはベベル独自の判断だが、私以外の女は許さないという理由で、コルド皇帝の妻と娘は勇者コロナと同じところに幽閉された。
◇ ◇ ◇
「これはこれはファン大臣お久しぶりです。」
「いやぁ、やっと国内が安定してね。シャフトに来るの久々だよ。」
挨拶してるのはコルド帝国の外務大臣ファンと、シャフト平和民主党の党首であり、次期大統領選候補でもあるロバート=ギアである。
ギアは50歳ちょうどで、政治家としてはかなり若い方である。そして精悍な顔つきで、シャフトのおばさま方に人気があった。また、祖父が初代シャフト大統領だということで政界のプリンスとして政治の世界でデビューを果たした。
ちなみに平和社会党を作ったのは彼の父である。
「もうすぐ、大統領選だね。今年の平和党はどうだい?」
「いやあ、正直負け戦です。ただでさえ、私どもは不利なのに、責任党が用意した候補があの勇者オリオンですからね。」
勇者オリオンは1年前に責任党から大統領選に打診されていた。この間、監視塔破壊に防衛隊に随行していたのは選挙のためのデモンストレーションでもあった。
結果、艦隊が全滅したのでその事実は隠蔽されたが。
「噂には聞いております、そうなるとそこまで、力を入れない感じですか。」
「まぁ、今回は存在意義だけを示して、8年後の選挙にかける感じですかね。オリオンなら再選も間違いないでしょうから、まぁ4年後もきついですな。」
シャフト大統領制は1期4年の2期まで務めることができる。今回と次回はほぼオリオンで決まりなので、ギアははっきり言ってやる気がなかった。
「…まぁお気持ちわかります。ところで今日はお疲れのギア様に贈り物をもってきてましてね。」
「おや、ありがたいですね。この時期だと国内からの贈り物はいろいろうるさいですからね。」
何が選挙違反になるかわからないので、この辺は慎重であった。
部屋の中に大きな箱が持ち込まれる。
「ギア様、最近女遊びはどうされてますか。」
「無理に決まってるでしょう。私は清純派ですからね。ばれたらもうそれでおしまいですよ。昔はそれこそコルドの女が好きでしたけどね。まさかコルドの女ですか?」
ぎゃははと清純派とは思えない下衆な笑い方をするギア。
「いえ、もっといいものです。」
そういって、ファン大臣は箱のふたを開けた。
中には、窮屈そうにベベルの妹フレアーが入っていた。
「こ、これは!?」
女、いやただの女ではないこれはまさか…
「…魔族の女です。いま、コルドでは魔族の女ブームでしてね。」
コルドは対外的には魔族を一部攻略することに成功し、結果としてオークを奴隷として働かせて農業生産力を格段に向上させたと発表していた。
また、一部の権力者は魔族の女を愛人にしてると噂だった。
もちろん事実は全くの逆である。
実際には魔族がコルドの内政に干渉し、オークに人間の妻を与えることで、仕事をさせ農業生産の向上をはかっているのだ。
フレアーはゆっくりと箱の中からそのあられもない姿を現した。
ギアの目はフレアーの全身にくぎ付けになっていた。昔から女遊びの激しかったギアも観たことのないような絶世の美女だった。
「ま、またとんでもない贈り物ですね。」
ギアはかつてコルド皇帝がした同じような反応を見せた。
「絶対に周囲の人間にばれない上に、忠誠心も高い最高の女です。あとはご自分で確かめられるがよいかと。」
ちなみにこの大臣もとっくにベベルに篭絡されていた。
ギアも魔族の女に対して抵抗がないわけではなかったが、その抵抗はすぐに消えていた。コルド皇帝と同じように見た瞬間に、ギアはフレアーに魅了されてしまったのだった。
「ギア様、フレアーといいます。なんでもお申し付けください。」
姉とは変わって、ものすごい落ち着いた、人に安らぎを与えるような優しくて暖かい声だった。
「これからも長いお付き合いを、ギア様にはお願いします。」
ファン大臣は不吉な笑みを浮かべてそう言った。
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