第35話「決意」
「ヴォーグ、お前はドラゴン軍団を連れてアサマを制圧しに行け。」
勇者たちを焼き払って、鋼華たちはシャフトの地に降り立った。周囲には勇者アサヒの雷撃で死んだ、あるいは動けなくなった魔族たち、そしてその魔族に見境なく襲われて死んだシャフトとアサマの兵たちが転がっていた。
「どうしたんですかぁ、急に…?」
「戦略を変更する、いまアサマは弱ってる。逃す必要はない。」
「僕らだけで…?」
「できるだろ?アサマには有効な対空武器はない。」
「でもさすがに無傷ではすまないよ。」
「竜を失ってもかまわない。やれ。」
しばらく聞いてなかった、ここ一年で最も怒気のこもった声だった。
あの会議からずっと聞いていなかった声だ…。
「はい。」
最近、魔王との間になかった緊張感をヴォーグは感じていた。
「もうすぐ援軍のドラゴンたちも来るだろう、到着次第向かえ。空魔団の生き残りもつれていくがいい。」
多くが雷撃によってやられてしまったが、空魔団にはまだ200程度、無傷の生き残りがいる。
「ゴーガ様は、どうするんですか。」
「ドラゴンを一匹貸せ。俺はそれで、デザス王国に向かう。」
「デザス!?何のために。」
「ダンヒル達だけでは心もとない、隙を見てデザスの制圧も考える。」
「兵力が違い過ぎるよ。魔王様。」
「場合によってはだ…デザス制圧は長期戦になるだろう。」
「…ゴーガ様が僕に乗って、一緒にアサマをやれば?」
「それはダメだ、正直今のおれはただの足手まといだ。ドラゴンたちだけのほうがいい。」
鋼華には、ドラゴンたちの炎で焼き払われる人間を見たくないというのもあった。
「はい…。」
しばらくして、メンフィスから7匹のドラゴンがシャフトにやってきた。
その中から1匹のドラゴンをヴォーグから紹介された。
「新人だけど、僕の次に速いドラゴンだよ。」
そういって紹介されたのは真っ黒で、大きな翼をもつドラゴンであった。
「ブラックドラゴンのガラムです。半年前にようやく軍団入りを許されました。」
ガラムは、まだ子供らしいがヴォーグより一回り大きい。
「新人に魔王様は任せるのは心配だけど、魔王様が速いやつっていうからね。頼んだよガラム!」
「ヴォーグこそアサマ制圧を頼む。最短で、王宮と軍の中枢を襲い、降伏を迫れ、王は殺すなよ。脅さないと意味がないからな。」
「任せてください。ここ一年のゴーガ様の考えはわかってきたつもりです。」
「よし、じゃあ行こう。すまんが、ピアニッシモは引き続き俺についてきてくれ。」
「すまんもなにも、ここにおいていかれる方が困りますよ。」
「そうだな、では頼むぞヴォーグ!」
「いってきます!」
ヴォーグを含む7匹の竜たちと、空魔団の生き残りはアサマの空へと飛び立っていった。
そして、鋼華とピアニッシモはガラムに乗って、デザスのそらへ…
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