究極の日曜日

やさしい手（残酷描写あり。苦手な方は飛ばしてください！）

　ぼくはまっている。

　カーテンをしめきったまどはすこしあいていて、つめたいくうきがぼくんちにはいってくる。

　だいどころのかんきせんが、ゆるゆるとまわってる。

　まっくらなへやで、まっている。

　ままはいつも、れいぞうこにはってあるカレンダーの日にちの、いちばんはじっこのあかい日にきてくれる。

　おなかがすいたぼくに、ごはんをもってきてくれる。

　ふくは、いまきてるのがいちばんだからって、ずっとこれ。

　かみも、ながいほうがいいからって、のばしてる。

　おみずはもったいないから、のどがかわいたときだけすこし。

　いいつけをまもるとままがあたまをなでてくれる。

　いいこね。やさしい手。

　ままとぼくのくらし。

　だけど、ままはこのまえの赤い日にこなかった。

　おなかすいた。

　たべるもの、たべるもの。

　テーブルに、ポテトののこりがあった。すっぱい。

　ポテトがはいってるかみぶくろ。いいにおい。

　たべる。

　たべる。

　たべる。

　だって。

　おなかが。

　ピーンポーン

　まま？

　母親はいませんねぇ…。鍵をお願いします。

　だれ？

　ふくをぎゅっとつかむ。

　ガチャガチャ

　そとはまっくら。

　しらないおじさんとおばさんがたってる。

　まっくらになったら、もうままはこない。あした、おしごとだから。

「だれ？ままはいまちょっとでかけてます」

　ままとのやくそく。しらないひとがきたらこういうの。

「私たちはね、君を助けにきたの。もう大丈夫」

　おばさんがぼくのてをにぎる。

　そのてはじんわりとあったかい。

「……頑張ったね」

がんばった？

ぼくはがんばってない。

がんばってなんか。

おばさんにそういいたいんだけど、

のどがぐっといっただけ。

むねがジリジリあつい。

めのおくがぎゅっとする。

　おばさんがぼうきれみたいなぼくのてをにぎったまま、からだをひきよせてぎゅっとした。

　わーんわーん。なみだがとまらない。

　ままがこなくて。

　おばさんのてがあったかくて。

　あったかいっておもっちゃいけなくて。

　ままにあいたくて。

　あたまをなでてほしくて。やさしい手で。

　もうままはかえってこない。

　ごめんなさい。

　まま。

　ごめんなさい。

　まま。

　まま。

　かえってきて。