屍霊術士は物足りない
タイプE
壱 とあるロリータによる睡眠妨害
「――っ、間に合ってくれよ!」
どこかの主人公が言いそうな台詞ベスト10ぐらいに入りそうな言葉を言いながら通学路を疾走する俺は、残念ながらプリーツスカートを履いた黒髪ロングの美少女ではないし、ジャムすら塗ってないただのトーストなんかも咥えていない。俺の名は
――昨夜――
ベッドの上、俺は毛布にくるまっている。時刻はだいたい12時。
「ああくそっ……眠れねぇ」
かれこれ一時間ほど眠ろうとしているが、何故だか睡魔は襲って来ない。ずっとソシャゲをやってたからかな……
「ああもう……」
狭いベッドの上を左右にごろごろしていたその時――
―キイィィィン―
「……んあ?」
突然、耳鳴りがした。直後、
――おいお主、聞こえているか――
何者かの声が響いた。
驚いた俺は、ベッドから飛び起きる。
「何だこれ!?」
――言伝てがある。覚悟して聞くがよい――
「はあ?」
辺りを見回したが、ここは俺個人の部屋。他に誰もいるはずがない。
――『頭の中に直接語り掛けている』というやつだ、私はここにはいない――
いきなりの出来事に脳の処理が追いつかない。お前は誰だ?何で俺を?どうやってこんなことを?
疑問は沢山あった。しかし最も気になったのは。
「……お前、口調の割に可愛い声してんな。」
奴の声を形容するなら、十人中の十人が『ロリっぽい』と言うだろう。そんな声だ。
――は?ち、ちょっと、うるさいうるさい!私を馬鹿にするなぁ!――
「……」
先ほどの余裕たっぷりの喋り方はどこへやら。何だかすごく動揺してるようだ。
――私はもう子供じゃない!『可愛い』じゃなくて『格好いい』声だっ!訂正しろー!――
「はは……何だこれ。俺疲れてんのかな」
――無視すんなーーー!――
うるさい。確かに可愛い声だが、頭に直接響くせいで頭の中がガンガンする。いい加減にしてくれ。
ちょっとイラっときた俺は、少し厳し目に色々言ってやることにした。
「おいお前」
――何?――
「まず人に物事を頼むときには、丁寧な口調で喋りなさい」
――はぁ?お前、私を誰だと思って――
「黙れ」
――んぐっ――
一蹴。
「それにだ。訂正しろったってお前の声が可愛い声なのは紛れもない事実だ」
――だから違――
「うるせえ」
――はうっ――
一喝。
更に続ける。
「覚悟しろって何をだよ。言伝てとか難しい言葉使っちゃ分かりにくいだろ?」
――ぐぬぬ……――
調子に乗った俺は、とうとう。
「第一、そんな子供みたいな声で凄まれたって――」
それを口にした瞬間、雰囲気が変わった。俺は後悔した。
――そんな、私はもう……――
声が少しずつ震え始めた。まさか。
「おいおい嘘だろ!?」
とうとう虚勢は決壊したようで。
――うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!――
例えるなら、真横でマイクのハウリングを聞くような。脳内に絶叫が響き渡る。
――ぼうっ!ごどっ、ごども、ごどもじゃぁぁぁぁっ!――
「頼む、頼むから泣き止んでくれぇ」
――ぢがうっ、なびでなんが、なびっ、なびでなぁぁぁぁぁん!――
「嘘だ……これは夢だ……悪夢だ……」
――びぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!――
(泣くならせめてこのテレパシーを止めてからにしてくれよ……)
そんな俺の儚い願いも届かずに、どれ程の時間が経っただろうか。絶叫はいつの間にかすすり泣きに変わっていた。
――うぇぇ……えぐっ……ぐすん……――
結局、夜明けになるまですすり泣きは止まなかった。
地獄のコンサートはやっと終わった。ふと時計を見る……もうこんな時間だ。
「クソ、眠ぃ……」
しかし、もう登校準備をしなければ間に合わない。疲れた体に鞭を入れ、腰掛けていたベッドから立ち上がる。
問題はこの時に起こったんだ。膝が伸びきるか伸びきらないかといった所で、俺は強烈な立ちくらみに襲われた。
「ぁ」
気付いた頃にはもう遅い。俺の体は、少し暖かい毛布とふかふかの枕の上に、背中から倒れこんでいた。
時計のアラームが鳴っていたような気がする――
……あれ?耳鳴りじゃないぞこれ。あのロリ声のせいじゃないか!
「何だったんだアレ……」
To be 魂tinued...
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