第5色 青

 小さい頃は青い色が好きだった。理由は多分海や空に似ているからだ。爽やかさがあるからとか、三原色の中でとかそういうものではなく、ただ漠然と、青い、ということが素晴らしく思っていた。空が好きだった。朝も昼も夜も含めて。登下校時、話し相手がいなければ空を見ていた。授業中、退屈だった時、空を見ていた。そういえば部屋の天井の壁紙は空の柄だ。ラムネの色も大好きだ。あの色の中に気泡が生まれ、水と空気の境界線すら飛び越えてくるような、青の中にある炭酸が好きだった。

 青いものが好きだった。服も、筆箱も、鉛筆も、全てが青だった。小さいころは青ければ何でもいいとさえ思っていた。今思えば不思議だが、青い食べ物はほとんど存在しない。しかしそれだけは全く疑問に思わなかった。

 思えば青色が周りにある時、大体にして私の気持ちは落ち着いていた。空を見たとき、海を見たとき、ラムネを見たとき、部屋の天井を仰ぎ見るとき。いつも私はその青に見とれると同時にその青の中にある、波に、雲に、泡に見とれ、気が付くと気分が落ち着いていた。私が青が好きだったのは、小さいころに有り余るエネルギーの行き場を見つけられなかった結果による精神安定が真相だったのかもしれない。

 青い色が好きだった。美しく、儚く、穏やかで、静寂、それでいて壮大で、落ち着く青。青い色を見ると、小さい頃の私と記憶の中で語り合うことができるようだ。

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