第4色 紺

 無彩色以外で好きな色は紺色だ。群青でもなく、藍色でもない、紺色。紺色とは紫がかった暗い青であるらしい。私の目は色彩を細かく見分けることができるわけではないので紫をその色の中に見つけることはできないが、一色でできているように見えて、実は一色ではない、というその韜晦にも似た正体を私はどことなく好んでいる。

 小学生の時、絵を描き、色を塗るとなると必ずと言っていいほどに好んで使っていた。対岸から見える街並みを描いて、それを塗り分ける。空は模写ではない限り、必ず紺色で塗っていた。私は夜が好きだ。かといって不良であったわけではない。友人と屯して近所に迷惑をかけたこともなければ、深夜徘徊で警察に補導されたこともない。散歩と自ら称して静まり返った道を目的無く赴くがままに歩いていた。夜は黒ではない。ほとんど黒のように見えて限りなく黒に近い紺色だと私は感じている。完全な黒で構成されるのは夜ではなく闇だ。真っ暗で何も見えないようで、寂寥とともに夜を過ごすという一種の自殺に近いような感覚に私は高揚する。

 宇宙も好きだった。あれも完全に黒ではなく、紺色だ。その中に見える無数の星々が点在している様が、実に現実離れしているようで私はとても好きだ。宇宙に関する話のできる友達がいなくて、私は自分の親友である本と幾夜を過ごし、言い知れぬ絆を、何処かの宇宙の話をしたがっている人に感じていた。

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