雨宿り

 歌うたいの猫は、公園で一番大きな木のところまで走って行きました。

 木の幹にはうろいていて、歌うたいの猫が中に飛び込むと、仔猫たちも続いて入りました。うろは外から見るより大きくて、みんながいっしょに雨宿りできるほどの広さがありました。



 雨は激しさを増し、周りの景色もすっかり霞んで、遠くは見えなくなってしまいました。


 黒い仔猫が歌うたいの猫に、またたずねました。

「どうして、雨が降るってわかったの?」


「虹を架けるからだよ」


 白い仔猫もたずねました。

「どうして虹を架けなきゃならないの?」


 

 歌うたいの猫は、今度こそ灰色の仔猫も何かたずねるかと思いましたが、やっぱり、うつむいたままでした。


 歌うたいの猫は、またうたい始めました。

 歌声は雨の中に流れだし、ザーザー激しかった雨音がだんだん静かになっていきました。


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