ブランコ

 船着き場を出ると、色とりどりの花で縁取られた美しい並木道がありました。道は大きな公園の真ん中を通って続いています。


 木漏こもれ日が煌めく中、黒い仔猫と白い仔猫が歩くのに合わせて、首から下げた鈴は澄んだ音で鳴りました。ふたりは鈴の音を聞くと、なんだか元気が出てきました。でも、灰色の仔猫の鈴だけは少しも音を立てませんでした。鈴の色もなんだか他の鈴と違ってくすんで曇っているようでした。



 微風そよかぜが道の先から、きれいな歌声を運んできます。

 渡し守の言ったとおり、街の入り口には大きな時計塔と門がありました。時計塔のてっぺんでは、星屑でできたブランコをこぎながら、雉白もようの猫がうたっていました。


 仔猫たちが見上げていると、星屑のブランコはするすると仔猫たちの前まで降りてきました。


 黒い仔猫がたずねました。

「何をしていたの?」


 雉白もようの猫は、ブランコに乗ったまま答えました。

「歌をうたっていたんだよ」


 次に、白い仔猫がたずねました。

「あなたが、渡し守さんの言っていた歌うたいの猫?」


「渡し守さんがそう言っていたのなら、きっと、そうさ」


 歌うたいの猫は灰色の仔猫を見ました。灰色の猫も何か質問するだろうと思ったのです。

 でも、灰色の仔猫はふたりと違って、うつむいたままで何もたずねませんでした。


 歌うたいの猫は、空を見上げました。

「雨が降ってくるよ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る