魔界夜祭 前夜祭






「明日はお祭だー!」


「ウフフ、まだ行けると決まったわけではありませんよ」


「僕が何としてもルドルフを説得するよ!」


なんたってお祭りなんだ!ルドルフのせいでいけないなんて絶対嫌だね。


「本当はこういうのはダメなのですが…お忍びでお城を出ちゃいましょうか?」


「え、いいの?」


「私にお任せ下さい」


「メル大好き!いこいこ!」


こうしてメルと城を抜け出し、祭りの準備進めを見に行くことにした。








「で、この人はだれ?」


「この魔界を守る騎士団長アルバです」


「よ、よろしくお願いします」


「魔王様の妻であられる王妃殿の命。何としても私が守り通そう」


「は、はい」


この人なんかいちいち重いな。まぁ立場的にはしょうがないのだろうけど。折角の外出が、硬くなっちゃう。

横から何か2人の小声が聞こえてくる。


(おい、メル。こんな事で俺を呼ばないでくれ。俺だって忙しいんだ…)


(あらあら、こんな事ですって…王妃様の護衛なのに…)


(そ、それはそうだが…魔王様にバレたら何を言われるか…)


(大丈夫ですよ。あの魔王様はおバカさんですから)


どうやらアルバさんはメルの尻に敷かれているようだ。そして魔王様も割と小馬鹿にされてるようだった。


「へぇ、魔物って言ってもみんな人間みたいな見た目だね」


「この辺りは普段は商店ですから、頭のいい亜人種しかいないんです。魔界で、商人は高い地位にいますからね。逆にいうと、綾汰様が想像する魔物も街から離れればおりますよ」


「凄いねぇ、初めてここの世界の事をしれた気がする」


メルと話しながら、街をゆったり散歩する。祭りの前の日ということもあり、皆活気がある。アルバはというと、一言も喋らずずっと後ろをついてきている。


「おや!アルバさん!こんなかわいいお2人連れてどうしたんだい?」


「いや、護衛のようなものだ」


「てことはどちらかどちらともか貴族様かい?」


「ま、そのようなものだ」


「貴族様が街を歩くなんて…これは腕がなるや!」


そう言うと、屋台な様な物に入り何かを作り出した。祭りというのは意外と、どこも共通なようだ。

あと、僕は貴族でもないし、かわいくもないんだが?


「貴族の姉ちゃん2人!良かったらこれ食べてくれ!この街名物ヤキスゥバだ!」


「あらあらぁ、どうもありがとう」


「ありがとうございます!」


いや、どう見ても焼きそばなんだけど。どうも見ても人間界の食べ物なんだけども!


「ねぇ、メル。そんなに僕女の子に見えるの…?」


「女の子に見えるというよりも…女の子にしか見えませんね」


そう言ってニコッと笑うメル。いや、そこは笑う所じゃないよ…


「あと、僕が人間だってバレてないのかな?」


「まぁ私の横にいますしね。この街じゃ人間の様な見た目のものばかりですし。以外と大丈夫なものですよ」


「へぇ、以外と魔界も平和なんだね」


ヤキスゥバ美味しい。


ヤキスゥバと、その後に貰ったベイビーカスティラを手に持ち、街を探索する。既に夕時で、段々と日が落ちてきた。


「このカスティラも甘くて美味しいね」


「そうですね王妃様」


「おいぃぃぃぃ!」


突然アルバさんが発狂しだす。何この人怖っ!


「あ、アルバさん突然どうしたのですか?」


「王妃様がお忍びでここに来ているのだ。バレたら不味いだろう…」


「あぁ、確かにそうね。すみません、綾汰様。」


「え、あぁ大丈夫ですよ!」


大きくため息をつくアルバさん。騎士団長とは大変な仕事のようだ。


「さぁ、もう充分楽しんだでしょう。はやく帰りますよ」


「確かにそうね。綾汰様、これ以上は暗くなって危険ですのでお帰りしましょう」


「うーん、充分楽しんだし、今日は帰ろう!」


良かったという顔をしながら、安堵するアルバさん。そりゃあもし僕に何かあったら、ルドルフに何されるか分からないしね。


「さぁ、帰り…!?」


突然アルバさんの顔つきが変わる。隣を見ると、メルの反応も変わっていた。


「綾汰様、私の後ろに」


そう言ってメルに後ろへと押し戻された。


「おい、さっさと姿を現せ。そこにいることは分かっている。」


アルバさんがそう言うと、黒のマントを羽織った者達が現れた。


「ふむ、いかにも怪しそうな奴らだ。ひぃふぅみぃ。全部で3人か。舐められたものだ」


アルバさんはそう言うと、剣を抜く。どうやら彼は、剣に自信があるようだ。


「残念ね。アルバ1人なら余裕だったでしょうけど…私がいるから勝てないわね…」


「いや、まて。なんで俺がそんな弱い事になっているんだ。おかしいだろ」


「おかしく無いわよ、アルバ私に勝ったこと無いじゃない」


「いや、そんなことわ…おっと」


ヒュンっと、短刀で切りかかってきたのを、いとも簡単に避けてしまう。


「その程度で俺らに喧嘩を売るなんて馬鹿な奴らだ」


「狙いはきっと王妃様でしょうね。王妃様すみませんがどこかで隠れておいてください。」


「う、うん!」


そう言われ咄嗟に物陰に姿を隠す。どうやら本気で戦うのに僕は邪魔なようだ。しかし、それもよく分かる。あの2人は、戦いの次元が違う。華麗に攻撃を避け、すぐさま攻撃を放つ。僕のような素人から見てもその動きに無駄はない。

しかし、相手も一筋縄ではいかず、見事に2人の攻撃を間一髪で避けている。


「こいつらなかなかやるな…フンッ!」


「そもそも私は精霊魔法使いなのよ…剣なんて使い慣れてないわ!」


「言い訳なんぞ聞きたくなく。メル、今すぐ王妃様を魔王様の元へ連れていけ」


「それじゃあなたが!」


「そんな事を言っている場合じゃないだろう…」


「チッ…分かったわよ!王妃様!私に捕まってください!」


「う、うん!」


咄嗟にメルの背中に飛びつく。まさか女の子に抱えられる日が来るなんて。でもそんな事を言ってる場合ではない。


「さぁ飛びますよ!」


「え?えぇ!?」


そう言うとメルは飛び立っていた。







「さぁ、あと残されたのは俺とお前だけだな。」


3人いたうちの2人は既に倒した。残るは1人だけだった。

しかし、この1人だけ強さが異質だ。このままでは、勝てない可能性もあった。


「貴様なかなかやるようだが…ここで終わりだ!」


剣先は空を切り、当たったのは顔を隠すフードだけだった。


「やっと顔を現し…お前は…!?」

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