【エヴリスタコンテスト受賞】救世主(仮)が救世主を探します!

浅野新

第1話 プロローグ

「早く暖かくならないかな」

 電車の窓から薄曇りの空を見ながら、私はため息をついた。制服の上から着ているダッフルコートの襟を強くつかみながら。

「真琴、寒いの苦手だもんね。二月は辛いよね~」

 クラスメイトの美夕がくすくす笑う。

私は、どうせ寒がりですよ、とちょっとふくれて見せた。優しい彼女は慌てて付け足す。

「こんな日は早く帰ってこたつにみかん、だよね」

 それはそうだ。

「ほんとほんと」

 

 プシューッツ

 穏やかなブレーキがかかり、自分達が降りる駅に着いた事を感じた。

 美夕としゃべりながら、前にいる人達に続いてプラットホームに下りる。

 その時。

 コトン、と足元で音がした。

 見ると、オルゴールのような小さな金の箱が蓋の開いたまま落ちている。

 誰かの落し物かな。

 拾おうとしゃがんだ時、

「真琴っ!?」

 私のすぐ後ろにいた美夕が、悲鳴に近い声をあげた。

えっ!?

な、何!?

私は、彼女へ振り向こうとした瞬間、急に足元の感覚がなくなったのを感じた。慌てて前を見る間もなく、自分の体が一瞬宙に浮いたのが分かった。


そして。

がくん、と。


「え。えええええーっっ!?」


底のない闇の中を、私は落ちて行った__。

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