第15話 プール
白い校舎に規則正しく並ぶガラス窓に、夏の日差しが反射して、キラキラと輝く。
校庭はジリジリとした表現が似合うくらい陽炎が揺れ、とても運動が出来るとは思えない。
そんなことをぼんやりとプールから見ていた。
着替え終わった羽澄嘉は、濡れて鬱陶しい前髪を七種芽夢に借りたピンで留めながら次の移動教室に向かっていた。
あらかじめ持ってきていた教科書は濡れないように防水のバックに入っている。プールと教室が離れているから仕方のない対策だ。
プールと校舎を繋ぐ渡り廊下は日陰なのに暑く、冬よりはマシだけど、夏も嫌いだなと恨めしく思う。
またしっとりと汗をかきはじめたのを感じながら、先に着替え終わった芽夢に追いつくべく、駆け足で向かう。
「ひろ」
頭の上から聞こえた声は、聞き覚えのあるものだった。
見上げると、二階の窓から顔を出してひらひらと手を振る白咲檬架がいた。
「プール気持ち良かった?」
あそこは階段の踊り場だったはずだ。
檬架も移動教室なのだろう。
「ぬるかった」
「ふふっ、ざーんねん。俺午後なんだけどさー、サボろっかな」
頬杖をつけて本当にやりかねない表情をする。一応幼馴染みとして「補習がキツくなるだけだからやめとけ」と忠告する。
「冗談だって」
夏なのに色白な美形が破顔した。
「あーそろそろ行かなきゃ。次科学室だから」
「そ、頑張れよ」
「ひろもね」
「うん」
そういえば、檬架のクラスは5階の科学室の一個下の階じゃなかったか?と思い出しつつ、芽夢に追いつくのは諦め、自分も急いで次の教室へと向かった。
編矢紐短編集 ナズ森 @sana_0310
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