第4話好きな食べ物、みたらし団子
【羽澄嘉】
両親共働きで、いつも帰ると祖母がおやつを用意してくれていた。それは大体和菓子で、豆大福とか羊羹とか煎餅とか。なかでも多かったのが祖母が好きなみたらし団子だった。それを食べながら宿題をしたり、一緒にテレビを見たり、その日学校で起きたことを話すのが平日の日課だった。
祖父は物心つく前に他界してしまっていて、正直ほとんど記憶にない。
一人っ子で初孫だった嘉は祖母にたっぷり愛情を注がれ、見事おばあちゃん子になった。
もし…祖父が生きていたら…と仮定してもきっとおばあちゃん子になっていただろうと思う。
優しかったけれどそれだけじゃなく、物知りで、悪いことはちゃんと叱ってくれる人だった。食べることとお洒落が好きで、身だしなみにはいつも気を遣っていた可愛らしい人でもあった。
そんな祖母が嘉は大好きだった。
だからみたらし団子は、祖母との思い出の味なのだ。今でも食べるたびに、優しさが口の中に広がっていくのを感じるくらい。
思い出す。
楽しかったこと。
叱られたこと。
悲しくて泣いた時、そっと抱きしめてくれてこと。
一生の別れとなったあの日。
あの夏の日。
人生で一番泣いた夜。
毎年この日に食べる味がいつもとはやっぱり違う気がするのは、一緒に食べてる気がするから?
物知りなおばあちゃん、教えてよ。
ああでも、その前に。
「俺17歳になったよ、おばあちゃん」
今年も一緒にみたらし団子を食べようよ。
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