世間には残念な女子がたくさんいるけど関わるのはごめんだ。
高瀬涼
恋愛相談部、なにそれ無理。
「学生」という身分は、表面上は勉学に勤しみ、一方でバイトをして社会人になるための練習をしてご銭を稼いだり、部活動などで青春の汗をかく、とても忙しい身分の人たちのことを指すはずだ。
そういう面を持ち合わせていながら、僕が思うに「暇な生き物」も学生にあてはまる定義の気がする。
かくいう僕も忙しいのか忙しくないのかよくわからない「学生」という身分だった。
窓からの景色を見ながら先生の声を遠くに聞く。
窓際の席はクラスでも人気の席だった。
席替えのときに運よくあたってラッキーだ。
最近、ラッキーという言葉を使うことがなく今久しぶりに使った。
それはラッキーだ。
ん。なんだかよくわからなくなってきたぞ。
「おい、成瀬ーお前話を聞いているのか」
「すいません」
注意され一応視線を前に向ける。
今は数学の授業だった。僕は理数系が好きだ。本が好きだがどうも国語は苦手だった。数学は全部話を聞かなくても一回パターンを理解してしまえばあとは聞き流せばいいのが楽だ。
ノートを書き写しながら、隣りの女子から手紙がまわってきた。
「なに、これ」
小声で茶髪なギャル風女子に問う。彼女は「まわってきた」とだけ言って机に紙屑を投げた。
仕方なく丁寧におられたルーズリーフを開ける。
そこには
“求む。帰宅部の諸君!! 恋愛相談部開設に基づき部員募集中!!”
とあった。僕はくしゃっと即座に手紙を握りつぶした。
「おいっこらああっ……! なに即座に握りつぶしとんじゃああああ!!」
教室の端から怒声をあげたのはクラスでも変わり者で通っている女子、八千草だった。
八千草は伝説の多い女子だ。
クラスでちょっとしたいじめでとある男子の机が廊下に出されたことがあった。
その翌日、クラス中の机を廊下に出してその男子の机だけひとつ残すという(逆にいじめにならないか。全員廊下に出せよ)意味不明なことをした。
そうこうしていると目立ちはじめるので、ガラの悪い女子にからまれだした。
だが彼女は、からまれた際の会話を録画しておき昼休みに校内放送を流した。
「みなさん、なんて卑劣な女子なんでしょうかあっ! 聞いてください、他人を罵るこの声、ひやかす周りの冷たい取り巻き……いったい、なにが楽しいのでしょうかああっ!」
なんてことをマイクで流していた。
これは学校で問題になり集会になり「いじめ」学習が増えた。
もちろん、いじめは良くない。
だが八千草はやりすぎる感がある。
ナイーブな問題を派手に解決しようとして余計にごちゃごちゃしてくることもある。
だが、そんな彼女が友人が多い。
なぜかというと運動神経も抜群でバスケの助っ人、陸上の助っ人、はたまた生徒会の雑務、文藝部の同人誌の編集、漫画研究部のトーンはり応援、園芸部の水やり。
大きなものから小さなものまで何でも首を突っ込む。
なんでもできるし、おまけに(いや、たぶんこれが大きい)彼女は美人だった。
目は多少、釣り目がちだが大きく、まつ毛も何もしてないのに長い。
つややかな黒髪はいつも天使の輪を描いている。
外の部活に結構参加しているのに肌は白いままで、たぶん、日焼けしないタイプなのだろう。
手足は長くすらっとしているために、そうそう演劇部にももちろん呼ばれていた。
だが、彼女は残念なことに……。
「おいこらあっ、聞いているのか成瀬っ! お前は暇を持て余している帰宅部だろうっ! 人生つまんねーって顔して窓みてんなら、わたしの開設する新しい部に入ったらどうだああ!」
「八千草あああっ、お前は授業も真面目にきいておられんのかああ!?」
僕に怒鳴る八千草。
それに怒る数学教師。
そう彼女は「残念な子」なのだ。
僕はとてもとても関わりたくない。
つづく。
世間には残念な女子がたくさんいるけど関わるのはごめんだ。 高瀬涼 @takase
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。世間には残念な女子がたくさんいるけど関わるのはごめんだ。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます