2017年10月31日ーーハロウィンはお城探検part7
景品?のようなものはクッキングシートっぽい紙に包まれていた。
直接入れてるものだと限られてくるからこう言った形式にしたんだろう。
開けようとしたら何故かファルミアさんに待ったをかけられた。
「すぐに開けないでちょうだいな。順に聞いていくわ」
でないと、てんやわんや状態の中で答えていくのが大変だそうなので。
種類を僕はよく知らないが、今回は参加する側だからその方がいいかも。まだ開かずに手の中にクラウの分と一緒に握りしめた。
「まずはエディね」
「おう……棒切れ?」
出てきたのは本当に棒切れだった。
木の棒と言うよりマッチ棒って感じかな?
「あら、いきなりそれ? 棒は……ちょっとあなたには不吉な象徴よ。不幸な結婚が待ち受けているって意味ね」
「げ」
この占いはいい意味だけじゃないようだ。
僕は?と握りながら感触を確かめてみたが、クラウのと合わせても棒じゃないのに少しほっと出来た。
「他にはいるかしら? 数は適当にしたんだけど、いくつか被ってるのは入れておいたの」
ファルミアさんがそう言えば、僕のように感触を確かめてた人達がほとんどだったようで、何人か挙手し出した。
「……我だ」
「なんで俺も」
当たったのは二人。
渾沌さんとイシャールさんでした。イシャールさんは特に顔色が悪かった。
「あら、御名手がお互いまだ者同士。エディも含めて幸先が悪いわね?」
「「うっせ!」」
「まあ安心なさい。この呪いは向こう先一年の運勢を占うだけ。継続的なものではないから安心なさいな。それに」
「「それに?」」
意味深な言葉にユティリウスさんとフィーさんがおうむ返しをした。
二人の問いかけを聞くと、ファルミアさんはにーっと赤い唇を弧に描く。
「不幸な呪いはまだまだあるわよ。こう言う呪いの当たりと呼べるのはごく少数。今回はそれぞれ一個にさせてあるわ」
「「「「げっ」」」」
「悪い方が少ないんじゃないんですか?」
なんだかおみくじに近い占い方法だ。
「うーん。私が教わった方法だと、こんな感じだったわ。さ、パーティーをちゃちゃっと始めたいから次いくわよ? フィーはどうだったかしら?」
「えーっとねぇー……なにこれ?」
フィーさんの包み紙から出てきたのは、ただの布切れ。色も特にない真っ白な麻布っぽかった。
その感触に覚えがあった僕は、クラウのを開けてみた。中身はフィーさんと同じものでした。
「クラウも一緒でした」
「神と聖獣にはいい意味じゃないわね……」
「これもあんまりいい意味じゃないんだ?」
なんだろうと答えを待っていたら、ファルミアさんが少し大きなため息を吐いた。
「布は、貧乏を表すそうよ。多分金銭的なことだったけど、クラウはともかくフィーには無縁に近いわね」
「僕が貧乏……まずあり得ないなぁ」
神様だし、お金にはこと困らないからかな?
「じゃ、次はリースね?」
「……ボタン?」
出てきたのは木で出来たような四つ穴のボタンでした。この該当者は、他に窮奇さん、ライガーさんとミュラドさんだったよ。
「あら不思議な巡り合わせね? 当たったのはちょうど男性だから良かったけれど……リース以外には不幸の象徴ね」
「ファル、どう言う意味だ」
意味深な言葉に窮奇さんの顔色がどことなく悪いような?
「言葉の通りよ。エディのと少し似てるわね? 女性にも同じ意味合いがあるのを混ぜてはいるけど、ボタンは生涯独身の意味があるのよ」
「「え」」
ライガーさんとミュラドさん兄弟がほぼ同時に声を上げちゃいました。彼らにはお付き合いしてる人がいるか知らないが、この占いの結果を知って似た面差しのお顔がどんどん青ざめていった。
「……幸先が良くない」
窮奇さんもどんどん青ざめていきました。
「じゃあ、私含めて女性にも聞きましょうか。指貫を持っている人はいなくて?」
どうやらそれが女性バージョンの独身の象徴らしい。
けど僕は違ったのでだんまりを貫いた。
ファルミアさんも同じだったが……残りの二人は顔いが悪くなっていった。
「これは誠ですの⁉︎」
隣だったので見れば、アナさんの手の中には銀製の小さな指貫が。
「大丈夫よ。向こう一年の運勢を占うだけ。御名手が絶対の理には敵わなくてよ?」
「そ、そうですの?」
「よ、良かったぁ……」
シャルロッタさんも気が抜けたのか床にへたり込みそうになっていた。
「次は……そうね。そちらで最後のマリウスに聞きましょうか?」
「私、ですか?……豆ですね」
煮てあるかはここからじゃ見えないが、マリウスさんが指でつまんでいたのは緑色のお豆さん。
これを見ると、ファルミアさんは軽く拍手されました。
「当たりよ! クリッチ豆は富豪を意味するわ」
「おやおや、今でも充分資産はあるのですが……ありがたい呪いですね」
「豆は他にもあるのだけれど、そちらは布と一緒よ?」
「「「え」」」
誰だ?とよく見渡せば、サイノスさんと饕餮さんに
残るは、僕とファルミアさんとセヴィルさんになった。
「もう一斉に開けましょうか? ある当たりはちょっと趣向を変えて二つにしてあるけど、残り一個は適当にダブらせたものなの」
ではせーの、と紙を開けば……僕は目が点になってしまった。
「なんですかこれ⁉︎」
「なんだこれは⁉︎」
僕とセヴィルさんが同時に声を上げてしまう。
え?とお互いの包み紙の中身を見れば……まったく同じものでした。
「ふふふ。二人とも幸先がいいわね?」
ファルミアさんは楽しそうに笑っていた。
この人作った本人だから、わざと僕達にこれが来るようにこうしたのか……とか疑いたくなるくらい仕掛けが巧妙過ぎる!
「なんだったんだよ?」
遠くて見えなかったのか、イシャールさんがこちらに回ってきた。
「……指輪?」
「指輪はこの結果を受けた次の年までに結婚出来るって意味らしいわ。カティはまだまだ難しいけれど、ゼルは見込みがありそうね」
「おーおー、ゼルに御名手が見つかりゃすぐにでも公爵方が張り切りそうだな?」
ここにいるとは知らない人達が多いから絶対口に出せません!
セヴィルさんもお顔を赤くさせてるだけで口を噤んでいます。
「ところでミーアは?」
わざと話を逸らしてくださったのか、ユティリウスさんが奥さんの方を向いた。
「私?……あら、棒切れだったわね」
この結果はわざとかどうかはわからないが、パイ占いはこれにて終了。
残りの時間は、全員で立食式のハロウィンパーティーを開くことになりました。
途中、主に男性陣参加のりんごを使ったゲームは見てて楽しかったけど、女性には出来ないんで全員断固拒否。クラウは趣旨がわからなくてりんごをかじるだけで終わった。
(それにしても、来年結婚って……)
婚約はしてるが、期間がどうのこうのと詳しく聞いてない。
もとより、僕の体が元に戻らないと成立しないと思うから無理だけども。
僕はフィーさんが用意したネックレスのチェーンに通された銀製の指輪を見ながら、そっと輪郭をなぞった。
(……まだまだいいよね)
ちらっとセヴィルさんを見れば、フィーさんに茶化されて僕と同じようにネックレスをしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます