2017年8月31日ーー夏の最後のピッツァ
夏も暮れの涼しくなって来た時期。
上層調理場には今日もたくさんの食材が集まってきております。
「ふゅゆゆゆ!」
「すっごいねー、クラウ」
貯蔵庫にはこれでもかと夏野菜を中心に色とりどりのお野菜が木箱に積まれていました。
目の前にはラクトゥことズッキーニが艶々つるんと山のように積まれてたよ。ナスとかもあったけど、ズッキーニの方が断然多いね。
僕がクラウと貯蔵庫にいるのは、ファルミアさんとおやつを作りに来たからです。
「野菜が断然多いわね。夏も終わりだし、何にしようかしら?」
「おやつですもんねー?」
野菜と言うとサラダが浮かぶけど、おやつにサラダはどうかなーだし?
「野菜蒸しパン?」
「微妙ね」
「サンドイッチ?」
「フルーツサンドは候補に入れておきましょうか?」
「うーん……ズッキーニやナスがこれだけあるとひと口ピッツァとか」
「それよ!」
「ぴ?」
当てずっぽうで言ったら、ファルミアさんがパンっと手を叩かれた。
「ナスとズッキーニなら生地を作らなくてもソースと具だけ用意してあればすぐに出来るわ! 窯も必要ないし、フライパンで手軽に出来るもの」
「甘いのはフルーツサンドにしますか?」
「そうね。カティはもちろんピッツァ担当よね?」
「はいっ」
ズッキーニやナスのピッツァはすっごく簡単。
用意しますは、チーズやトマトソース以外だと輪切りにした大きいナスとズッキーニ。薄切りベーコン、サラミ、ツナとかのお肉系も忘れず。マヨネーズも使うよ! あとはスライスした玉ねぎも少し。
まずはフライパンにオリーブオイルを温めて、そこにスライスしたズッキーニとナスを並べて片面を焼く。
「焦げ目がついたらひっくり返して具を乗せてー」
ソース、玉ねぎ、お肉とチーズの順に乗せたら蓋をします。待つこと約1分。蓋を開ければ、チーズがとろーりと溶けて端がカリカリに焼けていい匂い!
これをフライ返しでお皿に盛りつけて、とにかく大量に必要なので何度も何度も焼いていきます。
「ふゅふゅぅ!」
「熱いし、食べちゃダメだよ?」
「……ふゅぅ」
我慢出来ない食いしん坊さんでも、これはつまみ食いしにくいから上げれない。
「クラウー? プチカ上げるからこっちに来ないー?」
「ふゅゆ!」
助け船してくれたファルミアさんの声掛けに、クラウはお目々を輝かせながら急いで飛んで行った。
現金過ぎやしないかねクラウさんや?
まあいいかと僕は作業に戻った。
「野菜を土台にピッツァなんて考えもつかなかったなぁ?」
「野菜に火を通せば、あとはすぐに出来ると言うのが時短にもなるな」
料理長副料理長のお2人は少し距離を置きながら僕らの様子を見ていました。手の方はソースの仕込みなのか野菜を大量に刻んでいたけどね。
「試食されます?」
「いえ、後で我々も自作してみますよ。お気遣いありがとうございます」
「そうですかー」
たくさん作っても残ることはないしね?
クラウもだけど、
それから全部出来上がってから、いつものように食堂で待たれてる皆さんのところへ持って行きましたよ!
「お、今日はピッツァか?」
「え、ほんと⁉︎」
王様'sはテンションがすぐに高くなっていくのがわかりやすいなぁ。
「ちょっと趣向を変えてありますよー! 今日は生地が野菜で出来てます」
「「「「「『は?』」」」」」
まあ、この反応はファルミアさん以外あって当然。
とりま、中央にズッキーニとナスのピッツァを置いていきます。
「……ひと口くらいのピッツァ?」
「あ、ほんとだ。ラクトゥにミュイランが下になってる」
「今日はフォークを使ってください。そのまま掴むと落ちやすいんで」
「舌休めには果物のサンドイッチを用意したわ。ゼルはどうする?」
「……考慮はしておく」
では、冷めないうちにといただくことに。
「……どんなもんかと思ったが、ソースを下の野菜が吸って味が染み込んでんな。美味い!」
「オーラルとノットのもまろやかでいいねー」
「これは食事にと出されても頷けますわ!」
僕もひと口。
うん、油とソースを吸った野菜が柔らかくなっててチーズやお肉とよく合う。これよくお弁当に作ったんだよねー。
クラウにも食べさせてあげながら、間に甘いフルーツサンドも挟むとちょうどいい。
「そうね、リュシアの言うようにするなら……挽肉のソースと薄切りしたラクトゥにミュイランを交互に重ねてから、カッツをたっぷりかけてじっくり焼いたのなんてあるわよ?」
「それって、あの大皿で作るラザニアと同じかい⁉︎」
「ええそうね」
「ふぉー」
ラザーニャなんて久しぶりに食べてないから食べたくなって来ちゃうよ。ファルミアさんは既に実践済みだったんだ。今度教えてもらおうかなぁ。
「むしろ、夕餉それにしてくれ!」
「パスタの方が主食になるけど、あれだけラクトゥとかがあるから野菜だけで作りましょうか? ベシャメルソースも重ねればなおいいわね」
なんて暴力的な程に魅力なメニューだろうか。
それから数時間後に僕もお手伝いしたら、予想以上に美味しい野菜たっぷりラザーニャが出来て、なんとセヴィルさんが何度もお代わりするくらいの好評価をいただけました。
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