2017年7月7日記念SSーピッツァ祭りーpart2

 


「うぉ⁉︎ なんだこりゃ?」

「厨房をそのまま持って来たみたい!」

「気合い入ってんなぁ?」

「僕も手伝うー!」

「ふゅ」

「お前はこっちだクラウ」


 主賓も続々揃って来るよー?

 席に関してはフィーさんが指パッチンでどんどん用意してくれてます。

 僕はファルミアさんと生地の仕分けとかを実行中。


「今日は趣向もいつもと違うんで、小さめに伸ばします!」


 大体僕の顔の大きさよりもちょっと大きめ。

 サイズで言うならいつもがLサイズなら今日はSサイズかな?

 それともう一つ違うのは、


「別で分けておいた生地を棒状に細く伸ばして、ばつ印のように生地の上に乗せます」

「これでソースがこぼれないのか?」

「オーラルソースやジェノベーゼはいいんですが、マトゥラーソースだと流れやすいんで」


 一番しゃびしゃびだから焼く時にちょっとね。

 ファルミアさん以外の料理長メンバーさんが覗き込む中、僕は仕上げに向かうよ。


「ここはノット、こちらはテリヤキチキン、こちらは野菜メインのジェノベーゼ、最後はマルゲリータ」


 ハーフは作りやすいけど、4分割は家以外じゃお披露目なんて久々。

 レストランでもよくてハーフ&ハーフだからね。これやるのってほとんどデリバリーだもの。

 これを同じものであと二枚も同様に作って、渾沌さんからピールを受け取ります。


「えいや!」


 三枚続けてほいほい入れていく。

 厨房のよりサイズは小さいけど、今日のは生地が小さめだから大丈夫だった。

 高温で窯を温めてくださってたので、チーズはすぐに溶けていくからすぐに縁を焼くのにくるくる回していく。


「お皿お願いしまーす」

「ここに置いておくわ」


 今日はピールの上で切らずにお皿にぽんぽん乗っけていくスタイルです。

 お皿はファルミアさんと四凶さん達が用意してくださいました。


「まあ、素晴らしいですわ。ピッツァはこのように出来るのですね!」


 アナさんはピッツァの工程を見るのが初めてだったのでお目々キラキラです。


「今日はフォークとナイフで召し上がってください」


 一人一枚ずつだからね。

 最初の三枚は、王様'sと言い出しっぺのフィーさんに。


「いっぺんに四種類もか⁉︎」

「「美味しそー!」」

「今日は基本このスタイルで、お好みのを作りますねー?」


 けども、食いしん坊さん達はもうがっついています。

 せっかくフォークとナイフにしたのに意味ない気がしてくるよ。

 とりま、全員に行き渡るようにしゅぱぱとささっと作っていきます。

 焼くのは基本僕にして、成形はイシャールさん、ミュラドさんはばつ印の成形、マリウスさんはソースでファルミアさんはトッピング。

 それぞれのセンスが活かされてますよぉ!

 即席窯で何枚も焼けるとは言え、色んな種類を。

 デザート系は置いとくとして、ひとまずはお昼ご飯なんで食事系がメインです。


「うむ、美味い」

「小さいが、色々味が楽しめる」

「……なくなった」

「しかし、順番は守らねば」


 四凶さん達は労動した分?余計にお腹が空くようです。


「これでひと通りですが、私達はもう少し後でいいですよ?」

「あらダメよ。今日はお祭りなんだから無礼講よマリウス?」

「固いことはなしだぜ!」


 イシャールさんも食べたい気満々です。

 なので、ヴィラカダとアボカドのマヨピッツァをメインに彼には焼いてあげます。


「これこれ! この時期ならではの贅沢だ!」

「焦ってむせても私は知らないよ」


 と言うミュラドさんはツナマヨピッツァをぱくぱく食べていますが。


「カティアは食べないのか?」

「今焼いてますよ?」


 気になったのかセヴィルさんが来られて、僕は窯を指した。

 蒼の世界出身だからこその贅沢ピッツァ焼いてます!

 んふふ。


「でーきた!」


 取り出したのは、ソースは三種に残りはトマトソース。具材は野菜やお肉をバランスよくしていても全部のせ!


「…………お前だからこそ出来るものか」

「今ならセヴィルさんにも作れますよ?」

「頼む」


 なので、こそーっとすぱぱっと乗せてから窯へぽん!

 あっと言う間に焼けてお皿に乗せてから僕らもテーブルに。


「「「「何/んだ、それ⁉︎」」」」

「あら、全部のせ?」

「えっへへー」


 ちゃんと後でリクエストは聞くと伝えてから、僕はいただきます。

 デリバリーピッツァではお高いけど、自分で作れるならなんでも出来ちゃうのが手作りの醍醐味。

 さてさて、これを二枚くらい食べ終えてから。


「今日のもう一つのメイン、パンツェロッティゲームです!」

「「「「「「ゲーム?」」」」」」

「説明は私がするわ」


 ファルミアさんがルール説明をしている間に僕と料理長さん達とでパンツェロッティの準備を。

 ルールはロシアンゲームの簡易版。

 当たりが、僕が辛過ぎるとヒーヒー言っていたラミートンのブロック入り。ソースはベーシックにトマトソースでサラミピッツァ風に。

 大きさはクラウが初めての食事で食べたくらいのひと口サイズ。

 揚げ作業はマリウスさんで、彼にもわからないくらい大量にパンツェロッティを仕込んでいくよ。


「当たった人には、この卵を使ったピッツァをカティが振舞ってくれるわ」


 と言って、ファルミアさんが取り出したのはチョコミント柄のMサイズくらいの卵。

 中身は超濃厚な有精卵くらいの濃さを誇る美味しい卵で高級食材だそうです。

 ヴァスシードの王家じゃ当たり前だけど、その上に立つエディオスさん達でもあんまり献上されないんだとか。数が少な過ぎて、特級も滅多に出ないんだってさ。

 今日のは王家御用達のをファルミアさんが転移魔法で取り寄せたそうです。


「第一陣が揚がりました」


 公平になるよう、人数分揚げてもらいます。

 とは言え、かなり作ったので必ずしも当たるとは限らない。

 当たりは、三つだけどね?


「では、せーの!」


 僕が合図をしてからクラウも含めて一斉にかぶりつく。

 クラウだったらすぐには無理だけど、僕らなら半分だったりひと口で食べられたり出来る。

 男性陣の大半はひと口だね。特に食いしん坊さん達。


「はずれ?」

「こっちもー」

「…………違うな?」

「……………………かっら!」

「ユティか!」


 サイノスさんが声を上げれば、ユティリウスさんはひーひー言いながらその場でぴょんぴょんしてた。


「美味しいけど、これ辛い!」

「事前に言ったでしょう? はい、お水」


 僕やクラウもはずれで美味しくもぐもぐしてたよ。はずれでも妥協はしない。お肉は普通のベーコン角切りです。


「では、第二陣です」


 二回目は少し間を置いて冷ましてから。

 ただ、当たりだったユティリウスさんには渡さない。お腹の余裕はあるだろうけど、当たり用のピッツァのためにもね? 二回も当たったらいけないし。


「む、はずれか」

「こちらもだ」

「またバラ肉だー!」

「ちぇ、俺もだ」

「私も、だね」

「……………………」

「リュシア?」


 おや、ファルミアさんが声をかけられてから気づいたけど、アナさんの様子がおかしい。

 少し俯いて何かを耐えてる感じ?

 と言うことは、


「あ、アナさん! お水飲んでください!」

「…………………すみません」


 速攻お水を用意して手渡せば、アナさんはごくごくと冷たい氷水を一気飲みしていく。

 量は調整したけど、角切り三つ程度でも辛いの苦手な人にはダメみたい。


「はぁ…………まだ舌が痺れますわ」

「だ、大丈夫ですか?」

「ご心配おかけしましたわ」


 けども、アナさん汗すごいよ!

 なので、もう一杯氷水を飲んでもらいました。

 次は最後。


「こちらで最後です」


 さてさてー、とひと口食べるけど僕ははずれ。

 他はと見渡しても、ユティリウスさんとアナさん除く面々を見ても変化は見られず。

 あれ?と首を傾げてしまい、クラウをちょいと見たら、


「ぶゅゆゆゆ⁉︎」

「クラウ⁉︎」


 今になって辛さが伝わってきたのかとジタバタしているクラウにお水のお椀を持っていく。


「ふきゅ、ふきゅ!」


 ごくごくごくとお椀いっぱいだった冷たいお水を飲み干していくよ。

 飲み終わったら安心したのか大っきくため息吐いてた。


「当たりはユティとアナとクラウか?」


 エディオスさんスネスネモード。

 だけども、ルールはルールだからね?


「じゃあ、ビスマルクピッツァ作っていきます!」


 作り方は僕の知ってるビスマルクでも、アナさんがいらっしゃるのできのこ抜きのを。


「まずは生地を先ほどくらいの大きさにまで全部のばして」

「まあ!」

「へぇ?」

『ほう』



 ピッツァ回しを初めてご覧になる方は歓声を上げてくれました。

 伸ばし終えたらトマトソースを素早く塗って、チーズをたっぷり、薄くスライスしておいたベーコンを乗せてから中央をくぼませて卵を落とす。


「これを焼いて、カッツに焦げ目がついたらお皿に移して」


 卵は当然焼けていないので、火の魔法で炙ります。


「出来上がりです!」


 当たりのお二人と一匹の前に出せば、それぞれ目を輝かせています。


「ふゅゆゆゆ!」

「君には切り分けてあげるからちょっと待ってねー?」


 ナイフで切っていけば、卵は半熟でとろりと黄身が流れてくる。

 これだけでアナさん達はまた歓声を上げてくれるけど、クラウにはわからないから首を傾げていた。


「このまま食べると手がベタつくから。はい、あーん」

「ふわぁー」


 クラウのひと口サイズに切り分けたら、ひと切れをクラウの口元へ持っていって口を開けてもらう。

 開いた口の中へ入れてあげれば、むぐむぐとほっぺが動き出して、やがて水色オパールのお目々が輝いていく。


「ふゅふゅぅ!」

「ゆっくりだよ?」

「ふゅ!」


 だけど、大きめに切ったのもひょいぱくひょいぱくって勢いで食べていくから、喉に詰めないか心配になっちゃう。


「半熟の卵とカッツにバラ肉がこんなに合うなんて!」

「美味しゅうございますわ!」


 他のお二人にも満足してもらえたようです。


「いいなー」

「卵入れたの美味しそう……」

『…………くっ』

「また今度よ、食い意地の荒い人達には」

「そうしましょう」


 高級卵は当たりの人達分しかないので、ビスマルクピッツァはまたの機会に。

 それからは残った生地で思い思いのデザートピッツァを作りました。料理長の皆さんが生クリームベースのフルーツトッピングで競い合うので色々あったけど。


「美味しかったーー!」


 言い出しっぺのフィーさんはご満足のようです。

 良かった良かった。

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