2017年6月28日ーー個性色々完璧?なパフェ
「リュシア、ゼル。そこまで構えないでちょうだいな、料理と言っても飾り付けだけよ?」
「とは言え、初めてのことですもの!」
「俺もこの手のことは初めてだからな……」
アナさんは緊張でカチコチになられてて、セヴィルさんも腕組みして眉間にシワを寄せながら材料が乗ってるプレートを見ていた。
「えー、では準備も出来たので始めますね?」
と言うのも、今日は趣向がいつもとだいぶ違います。
料理出来る組以外も全員で作り上げるのでありまする‼︎
「ふゅ、ふーゅゆゆゆ!」
クラウだけはちみっちゃいお手手では難しいから、僕の横で浮かんでいるよ。
何を作るかと言うと。
「改めて、今日はパフェを作ります!」
「昨日も言ってたけど、パフェってどう言うものだい?」
挙手があったのはユティリウスさん。
これは意外や意外。
ファルミアさんの方に振り向けば苦笑された。
「目立ち過ぎるからやめておいたの」
「目立つ?」
「ヴァスシードでは
「俺としてはそう言ったふっるい概念とか取っ払いたい‼︎」
「改革には時間がかかるものよ、リース?」
「わかってるさ」
服装は中華風だし派手っぽいイメージ持ってたんだけど、どうやら違うみたい?
とまあ、お家事情は一旦置いといて。
「昨日作ったキビトのシリアルや生クリームとか、ケーキの端切れだったりくだものを使うデザートなんです」
「見本は私とカティが見せるわ」
「「はーい」」
「「おう」」
『承知』
「……わかった」
「どのようなものでしょう」
皆さんの了解を受け取ったので、僕とファルミアさんはそれぞれ花瓶のようなガラスの器に盛り付けを始めた。
(僕はフルーツと生クリームを使ったチョコパフェにしーよっと!)
パフェって言うと、僕にとってはやっぱりチョコレートパフェなんだよねー?
甘いけど時々苦く、舌の上で味の変化が色々富んでくるから僕これが好き。
まずはココアとプレーンのスポンジケーキの端切れをちぎって混ぜて、器の底に敷き詰める。
「ふゅ?」
「クラウのにも入れてあげるからねー?」
「ふゅ!」
次に生クリームをケーキが見えないくらいスプーンで入れて、その上にまたスポンジの層を作るけど、ここにはミルクチョコの砕いたものを少々乗せてからクリームを乗せるんです。
「あら、チョコパフェ?」
「ええ、ファルミアさんは?」
「チョコを使わなくもないけど、今回はクリームチーズ使ってティラミス風かしら?」
おお、それも美味しそう!
けど、僕はクリームチーズを使わないよ?
チョコパフェにしちゃうとくどいと言うか僕にはそこまでのアレンジ力がないんだもんね。本職のパティシエじゃないから、あくまでコックの兼任程度だからさ?
「シリアルを入れてチョコソースとダイラ(ラズベリー)を散らして、また生クリームで蓋をする前に」
冷却魔術で保冷中のチョコチップジェラートを適量お山の形になるように乗せてからクリームで覆う。
完全に生クリームの山になったら、ポッキーはないけどビスケットもどきやプリッツもどきとカットフルーツでこれでもかとデコレーション‼︎
配置はちゃんと考えてね?
「ふゅ、ふゅぅー‼︎」
「でーきた‼︎」
「あら、可愛らしいわね?」
ファルミアさんの方を見れば、生クリームは控え目っぽく見えるシンプルなティラミス風パフェが出来上がっていたよ。
フルーツはシンプルに夏苺の小さいのとは可愛らしい。
「「「ほーぅ?」」」
『細工物のようだ』
「可愛らしいですわ‼︎」
「………………そんなにも生クリームを使うのか」
あ、感心されてるメンバーの中でもセヴィルさんが苦い顔に!
「あら、ゼル? ケーキと果物だけを重ねててもパサパサで食べにくいわよ? 薄くてもいいから生クリームは乗せた方がいいわ?」
「ジェ、ジェラートを一緒に乗せる方法もありますよ‼︎」
「そう、か?」
「それよか早く作らせてくれよ?」
「俺もー!」
食いしん坊'sが待ちきれないようなんで、レッツクッキング?
ファルミアさんが合図を出せば、皆さん工作よろしく飾りつけに入っていったよ。僕はセヴィルさんに、ファルミアさんはアナさんの指導に入った。
「どう言う味がいいですか?」
「…………出来れば甘さが控え目であればいいんだが」
「カラナ(唐辛子)のジェラートは今回作ってないですからねー?」
食べる対象者がセヴィルさん一人しかいないものだから、今回はパスってことになったし。
「ふゅ、ふゅぅ?」
とここで、クラウが声を上げてフルーツを指していた。
あ、僕クラウの分も作らなくっちゃ。
それを思い出したのと、それならクラウの分を甘さ控え目にさせてみればと思いつく。好き嫌い基本なんでもなくがっつく子だからね?
「んー…………あ、そうだ。セヴィルさんのにはケーキの端切れをコフィー(珈琲)で浸したものを使いましょう!」
「コフィーを?」
「ティラミスってお菓子は甘さを抑えるのに?、コフィーを浸したケーキかビスコッティを使うんです。結構美味しいですよ」
「…………やってみるか?」
と言うわけでクラウ含めて三人で厨房に行ってコフィーをもらうことに。
ちょうど淹れたてがあったのでそれをもらって、冷却魔術で冷やしてから僕が見本でスポンジケーキを浸していく。
「これを器の底に敷き詰めて、生クリーム、果物、シリアルとかをお好みで重ねていってみてください」
「わかった。仕上げの飾りつけのところではまた声をかけていいか?」
「いつでも大丈夫ですよ」
と言う訳で、他の皆さんのを見ながら僕はクラウのを作っていく。
皆さんなかなかに個性が溢れてますよ。
四凶さん四人はファルミアさんを昔っから手伝ってはいたって聞いてたけど、
だけど、先にファルミアさんが注意してたから僕は自分の方に集中出来る。
と思っていたんですが、
「ここはどうしようか……だが、クリームを少なくし過ぎても」
慎重派がこちらにもいらしたよ。
まだたったの三層。
セヴィルさんどれだけ構想練ってるんですか!
「ご自分で召し上がるんですから、好きなようにされていいんですよ?」
「そうか? だが、カティアやファルミアの方を見ると、な?」
僕とファルミアさんの見本はクラウが食べないように防御結界を張ってあります。あと冷却の魔法も追加してるからジェラートやクリームが解けないようにも。
実際、クラウは突撃したくて結界前で張り付いているよ。ガラスに顔をぺちょっと押し付けたみたいに。
引き剥がしてもまた懲りずに行くからこれは放置。
とは言え、
「クラウー? ジェラートどれがいーい?」
仕上げ直前のジェラート選びだけは聞いておかないとね?
僕が呼べばクラウはすぃーっと飛んできてジェラートのバットまでやってくるとキョロキョロと首と言うか体を左右に振っていた。
「ふゅーぅ?」
気になってるのはベリーミックスとレアチーズっぽい。
一種類じゃなくてもいいなと思って、僕は少なめにそれぞれ乗せて上げてからクリームで隠した。
「ふゅゆ!」
「あとは果物とチョコチップで飾りつけしてー」
仕上げにビスケットとビスコッティを添えてミントをあしらえば完成!
「後で皆さんと食べるからこれも結界に入れるよ?」
「ふゅぅ……」
すぐ食べてると思ってたのかお耳と翼をへにょっとさせちゃったよ。
だけど、これを無視して出来たパフェを結界に入れてしまう。
(さて、セヴィルさんはー?)
と振り返れば、さっきよりは進んでてジェラートを選びに行ってるとこだった。僕がジェラートを重ねてもいいと言ったのを実行しようとしてるみたい。
「よっしゃ、出来た!」
とここで、エディオスさん。
完成のお声に全員の視線が集まるが、その出来栄えはなんと言うか……。
「エディ? 甲冑っぽくよく出来たわね?」
可愛さを求めてた訳じゃないけども、少ない材料でよくここまで出来ちゃうのも感心ものだよ。
他のフルーツは下の層に使われてるっぽいです。
「俺もこんなとこか?」
サイノスさんは僕の見本寄りに近い感じに。
「僕もでーきた!」
「俺も出来た!」
この二人に関しては個性的過ぎてツッコミにくい。
食べるのは自分だから何も言わないでおくけど。
だって、クリームはともかくジェラートてんこ盛りはどーすんのさ!
四凶さん達もそれぞれの個性が出てて面白いから以下略。
「わたくしも出来ましたわ!」
アナさんは期待大。
メイクが得意という事はセンスが問われるからねー?
どんなのかなと振り返れば、唯一あったハート形のラズベリークッキーに合わせて、夏苺とラズベリーをふんだんに使ったベリーミックスパフェに仕上がっていた。
うんうん、とっても可愛らしい‼︎
「おや。伺ってはいたのですが、そのように作られるのですね?」
給仕のお姉さんお兄さんを従えて、マリウスさんご登場。
コフィーを持ってこられたみたいです。
「これはどう言うデザートなのですかな?」
「パフェって言うんです」
「パフェ?」
「完璧を意味するような……でしたっけ?」
「ええ、たしかそうだったわ」
フランス語をもじったような、としか覚えてないんだよね?
「ほぅ………この一番上の部分は何で支えているのですか?」
「ジェラートですよー? その上をクリームで見えなくしてるんです」
「……一つ作らせていただいてもよろしいでしょうか?」
「構わないけど?」
そこからが早かった。
さすがは上層調理場の料理長。
仕組みがわかれば、あとは味のバランスに見た目の美しさを注意しながらもあっという間に美し過ぎるパフェが出来上がってしまった。
食べるのがもったいないくらいに……。
「ふわわ……」
「さすがと言うべきね?」
「いやいや、つい熱くなってしまいました。しかし、材料が揃えば誰でも思い思いの一品が出来るのは良いものです。試作段階で中層に伝えても良いでしょうか?」
「あそこは甘いもん好きが多いからなー? エディ、いいだろ?」
「構わねぇぜ?」
これが中層から後に下層名物となり、気に入った者が城下町のパーラー的なお店でやればヒットするだろうと口コミで伝えたのは後の話。
僕らは出来上がったパフェをそれぞれ美味しくいただきましたよ?
セヴィルさんは自分で調整してたけど、全部は無理だったようで丸ごと一人前平らげたクラウにあげてました。
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