第2話 大草原で魔獣狩り

「とぁぁ!」


草原へと辿り着いて、私達が始めたこと、それは魔獣狩りだった。

その理由一つは資金集めため。

私はこの家の財政が苦しいことを実は知っている。

だからこそ、この家が潰れ追い出されたときに備えているのだ。

そして私がこの家が苦しいと悟った理由、その理由は継母とエイシアだった。

私の家は実は継母とエイシアの散財でかなり財政が苦しいのだ。

しかも散財して買ってきた殆どはガラクタ。


「お姉様!このダイヤ、100万バルするのよ!」


前に一回やけにダイヤの散りばめられた服を着てエイシアが私の前に来たことがある。

だがその時自慢しながら言外に、


ー貴女にはこんな服は着れない


と告げてくるエイシアにいらっ、ときてついそのダイヤを行商人に売った時があるのだが……


「お嬢ちゃん、これが100万バルって……」


………滅茶苦茶笑われた。

私はあの時の屈辱を忘れない。

私がそう思ったわけじゃないのに!本当に違うのに!というか笑いすぎでしょ!

そして行商人のおじさんにこれは一万バルもしないと笑われながら私は悟ったのだ。

つまり、継母とエイシアの目は節穴だということを……

お父様はいつか家計が本当にピンチになれば継母とエイシアの買った服やドレスを売れば良いと思っている……何もいうまい……憐れ父よ……

ついでにその後エイシアは100万バルと言っていたドレスのすぐ下にあった宝石を100万バルのダイヤと思い込み、変わらず私に自慢しにきた。


そんなんだから、騙されるんだよ!


そして財政難の深刻さを知ったその時から私はフェリルと共に魔獣狩りを始めたのだ。


ここの魔獣は強い。

だが、その分魔獣が一体に一つ持っていると言われる魔石と呼ばれる核は上質だ。

それだけの危険を犯す価値がある。

………と言いたかったが、実はそんな危険など犯していない。


「クルルッ!」


「きゃんきゃん!」


………正直フェリルが強すぎて、凄く簡単に狩りができるのだ。

あれ、おかしいよね?今さっき逃げていったブラックウルフという魔獣は群れならB級レベルの危険度を誇るとかで、冒険者の中でも一握りの人間ぐらいしか倒せないって聞いたんですけど?

一発の魔法で30匹以上消滅させるなんてどれだけフェリルやばいの……

そう私はやってやったぜ!とばかりに羽を広げているフェリルの姿にかたかたと震える。

今更ながらにフェリルが、伝説の幻獣フェニックスであることを改めて思い知って……


「クル?」


「あぁ!かわいい!」


だがフェリルのつぶらな瞳に見つめられた瞬間そんな考えは吹き飛んだ。

吹き飛んで消え去り、代わりにこの可愛い生き物を愛でないとという衝動が頭を占める。


そして私はフェリルに飛びついて撫でくりまわして数十分にも渡る時間をフェリルとのスキンシップに消費することとなった………





◇◆◇





それからようやく正気に戻った私は一本の丈夫な棒を持って1匹のブラックウルフと対峙していた。


「グルル!」


目の前で唸るブラックウルフ、その姿に私は恐怖心を抱く。


「くっ!」


だが私はフェリルに助けを呼ぶたくなる衝動を必死に押し殺した。

今私がブラックウルフと対峙している理由、それは私もある程度自衛ができるようにするためだ。

今はフェリルという心強い仲間がいることで私が傷つく可能性も低く、さらにフェニックスの特性で傷ついても直してくれる。

だからこそ、今は積極的にそう私は思っ切り声を出して足を踏み出した。


「たぁぁ!」


ブラックウルフは確かに群れならばとんでもない脅威になる魔獣である。

だがその反面、1匹だけを相手にすると途端に及び腰になる。

そして目の前のブラックウルフも私の叫び声に過敏に反応していて、及び腰になる。


「いやぁ!」


その隙を私が見逃すことはなかった。

及び腰になったブラックウルフとの距離を果敢に詰め、私は棒をブラックウルフの足へと振り落とした。


「キャン!」


悲痛な悲鳴とともに片足がブランと垂れ下がったブラックウルフが私との距離を取る。

それは逃げようとしての行動が、それとも態勢を整えようとしての行動かは私には分からない。

だが私はブラックウルフが何かの行動を取る前に距離を詰めていた。

そして私はその勢いのまま、他の足に棒を振り下ろす。


「キャン!」


まさか自分の速度についても来られるとは思っていなかったのか、ブラックウルフは悲鳴と共に驚愕の叫びを漏らす。

確かにブラックウルフは普段ならば私には追いつくことなど出来ないくらい早い。


しかし、片足を汚した今は違う。


「ふふん!勝負は決まっていたのだよ!」


私はそうブラックウルフに向けて嘯きさらに他の無事な足へと棒を振り落としてブラックウルフが立ち上がれない状態まで追い込める。


「クルッ!」


「あっ、ごめん!フェリル!」


そんな中、調子に乗っていた私へとフェリルの警告の鳴き声が響き渡る。

そしてその声を受けて自分が調子に乗っていたことを悟った私は今までの行動をを反省し、そして倒れて動けないブラックウルフへと微笑みかけた。


「うん!今からは慎重にきちんとするね!」


「キャンキャンっ!?」


その言葉に、意味が分からないはずなのにブラックウルフの顔から表情が消える。

あれ?おかしい魔獣は感情が薄く滅多に見せないのに……

そして私はそのことに対する疑問を抱きながら、棒を振り下ろして………


「クル………」


全てが終わった後、何故かフェリルは震えていた。

何でだろうね………

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