傍観者たち 8
事件から二週間が経ち、輝のけがはだいぶ良くなってきていた。このままいけば、もう二、三日すれば完治するだろう。アースはそう言って、少し休憩をするために外に出ていった。窓際にある輝のベッドからは、裏庭が良く見えた。アースは表に出ていったから見ることはできないが、二階から見る裏庭の景色もいいものだった。
何日か前にミシェル先生を交えて次の目的地を定めた時に、輝は久しぶりに胸が高鳴るのを感じた。月の箱舟の動きはまだない。アースやナリアによると、不気味な動きはまだないという。それまでに守らなければならないシリンは押さえておかなければならない。
輝は、そんなことを考えながら庭を見ていた。すると、誰か知らない人が庭先に現れて、輝に礼をした。帽子を深くかぶっていたのでよく分からなかったが、プラチナブロンドの少し長い髪に、赤い瞳の男性だった気がする。同じ特徴の人間が屋敷にいるが、彼よりもずっと年上に見えた。
「あれ、誰だろう」
男性は、輝に笑いかけると、すぐにどこかへ去っていってしまった。次に、四十代半ばくらいの男性が、登山なのか長旅なのか、大きいリュックを背負って、探検家のような帽子をかぶってやってきた。彼は、窓の外を見つめる輝に、帽子を脱いで挨拶をした。
「高橋輝さんですね。フェマルコート家の別邸はここでよろしいのでしょうか」
そう聞いてきたので、輝は戸惑った。彼は素性が知れない。自分の能力で調べてみたが、シリンではないようだ。だからと言って、普通の人間とは思えなかった。
「どなたかは知りませんが、どのような用件でここに?」
すると、男性は照れたように顔を赤くして頭をポリポリと掻いた。
「いや、息子たちがここに来るようにと」
「息子さんですか?」
輝が聞き返すと、男性は、はい、と一言言って、輝を見つめた。その時、屋敷の裏口から裏庭に通じる道を、男性が二人、走ってきた。そして、今まで輝が話していた男性に勢い良く抱きつくと、互いに支え合って、何かを喋っていた。
「輝! 車いすを用意するから、ここまで降りてきてくれ!」
指示を出したのは、アーサーだった。この人はアーサーの知り合いなのだろうか。不思議に思っていると、もう一人の男性であるセインが、輝に向かって笑いかけた。
「私たちの父、イーグニス・ノクスだよ。とにかく、君や町子たちにも来てほしい。お茶はこちらで用意する」
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