それは彼女に必要ない。


前に職場のみんなで

京都へと旅行に行った時の事。


一緒に行ったAちゃんという子は

それはもう普段から本当におしゃべりが大好きな子でしてな。


行きの車内でも1人で話し続け、ホテルの部屋でも寝る直前まで話し続けて、ついでに言うなら眠るのが超遅い。


そんなこんなで彼女と明け方まで話続け、

むむはすっかり寝不足に。


そしてそのまま帰りの車内でも

フラフラしながら、Aちゃんの話を聞き続けるむむ。


…すげぇな、昨日あんなにしゃべったのに

まだしゃべってる。


いやぁさすがに若いだけあって元気だわ。


「すごいね、Aちゃん。

旅行疲れなかったの?」


運転をしてくれていたSさんも

止まることを知らずにしゃべり続ける

Aちゃんの元気さに常にニコニコ。


「もぅ!昨日のホテルでもAちゃんしゃべりすぎて全然寝かしてくれなかったんですよ!」


そんな話題で盛り上がりながら途中で

休憩がてらお店に寄ることに。


みんなでブラブラお買い物をしていたら、

天然石パワーストーンが沢山売られているコーナーに遭遇したむむ。


当時石を集めるのがやたらと大好きだったむむは、自分が寝不足であった事も忘れて夢中でその石達に魅入っていました。


薄水色に黄緑にピンクに紫…

色彩々に並べられた石達に

もはやむむはウットリ。


しかもこのお店は、「健康運」とか「金運アップ」とか「幸せな結婚」みたいに、石ごとにきちんとその効果や意味が丁寧に記載してあってものすごく分かりやすい。


何か1つ自分へのお土産に買って帰ろうと

むむがすぐさま石の物色をし始めると、むむの後ろからAちゃんとSさんがゾロゾロと着いてきていました。


「わぁ綺麗~♪」


そう言って石に手を伸ばそうとした

Aちゃんに


天然石パワーストーンってね、始めに無意識に手にとったものが、実は今の自分にとって必要なものだったりするんだって。」


そう言って自慢気に話すむむ。

えぇ、それはもちろん以前にネットか何かで読んだ完全なる他人様の知識でございますが何か?


「…ん~、じゃあどうしよっかな…

見たら迷うから、目を閉じて決めよう!」


そう言って目をつむったままAちゃんが手にした石に記載してあった効能は…



【元気がみなぎる】



「すぐにその石を離せぇぇぇッッ!!」


「これ以上元気になられてたまるかぁぁッッ!!」



すぐさま慌ててスペシャルコンボを繰り広げながらAちゃんからその石をひっぺがした

むむとSさん。


…帰りの車内くらい、ゆっくりしたい。


どうやらむむとSさんの気持ちは

すでに1つだったらしい。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る