大脱走②


脱走が好きなハムスターは

春菊(♂)だけではありませんでした。


春菊(♂)の隣に住んでいた

トマト(♀)も常習犯でした。


ある日の夜、

お母さんもお父さんも

たまたまいない時間帯に

トマトがケージの中にいないのに気がつきました。


春菊(♂)の一件からハムスターが脱走する度にしこたま母親に怒られていたむむは、

何とかみんなが帰ってくるまでに

トマトを見つけなければなりません。


その頃のむむはとても臆病者だったので

例え自分の家でも

電気が着いていない部屋には

一人で入ることが出来ませんでした。


でも、今勇気を出して行かないと

もうすぐ暗い部屋より恐ろしい母親が

帰ってきます。


むむはドキドキしながらあらゆる部屋を探しました。


物置きみたいになってる部屋も

タンスや棚の隙間も

春菊(♂)が寝ていた部屋にもトマトはいません。


…やばい、やばい、やばい、やばい…


まさに時間との勝負です。

むむが焦りを見せはじめた頃、


…ガサ…ガサガサ…ゴソゴソ…


冷蔵庫の下から

何やら聞き慣れない音がします。


むむは意を決して、

冷蔵庫の下に30cmモノサシをつっこんで

音の原因であるソレを

引っ張り出してみました。


すると中から出て来たものは…



ゴ◯ブリホイホイに引っ掛かった

トマトでした。


トマトは必死に逃げようと

ジタバタしています。


標的であるゴ◯ブリは1匹も

かかっていないというのに、

一体何なんだこのハムスターは。。。


幸い粘着シートには

手足しかくっついていなかったので

毛がなくなったりといった二次災害には

至らず安心しましたが、


ハムスターのものすごく小さな手足を

傷つけないように粘着シートから剥がすのは

子供ながらにとても大変でした。


粘着シートから剥がしたトマトを

ケージにポイっと入れて一件落着。


…のハズでしたが、


なんとトマトの手足には

粘着シートがまだ

うっすらと残っていたようで、

そのままケージの中に入れられた

トマトの足にはもっさりと大量の木くずが付着していました。


4本の足にもっさり木くず…。


まるで何か別の生き物みたいです。


そして楽しそうにトマトが

回し車を回す度に

周囲に飛び散っていく沢山の手足の木くず…


本当に迷惑でした。


でもそんなトマトも数日後には

普通のハムスターに戻っていたので

とりあえずはめでたし、めでたし。

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