異世界街道を武士が駆ける!!

@maron3

第1話 武士と異世界

「ああ、異世界召喚か…」

僕、田山一誠は焦らない。

こんな場面はもう何度も妄想したからだ。

だから、目の前にどう考えても日本じゃない光景があっても焦らない。

目の前に獣耳やドワーフが歩いていても焦らない。

そして、見知らぬ鎧男に白刃を突きつけられたって…

「そこの怪しい者、私は騎士団だ。ちょっと来てもらおうか」

じ、 冗談じゃない。僕はただ、気づいたら異世界にいただけなのに。

「拒否します、僕はなにも悪いことしてません」

ここはきっぱりと断らなくては。

「いや、拒否って…」

鎧男が思わず口ごもっている。

「僕はここに立っているだけです。悪事は働いてませんし」

「いや、格好も怪しいし…」

「僕の国では、コスプレという文化もありました。この国は随分と窮屈ですね」

「こすぷれ? ああ、もう訳わかんねー」

鎧男はそういうと、持っている片手剣を振るう。

僕の額がそれをかすめ、浅く切れる。

「うわああーーッ!何するんだこの」

抵抗を試みるも、剣の柄で頭部を殴られ、尻餅をつく。

殺られた、そう思った時ーーー


「天誅ッ!」

スパッーーー!

空を切る音とともに血しぶきが上がる。

「うおおおおおーーやりやがったな!誰だ」

その一撃は鎧をも貫通し、鎧男の腹部を裂いていた。

「くそッ!!」

鎧男は再び片手剣を握り、襲撃者を探す。

近くの路地ーー否

人混みの中ーー否

「弱き者を苛めるなど、武士の恥」

その人物は、民家の屋根にたずさんでいた。

「拙者、甲斐守春彦が成敗いたす!!」

刹那─その人物──春彦の姿が霞みに消える。

「チクショウーー!」

鎧男はヤケクソ気味に片手剣を振るう。

だが、そのすべてを華麗にかわす春彦。

そして───


「ウギャアーーーッ!!」

断末魔の叫びを上げ、鎧男が倒れる。

流れる大量の血液が池を作る。

そのすぐ側で無言で立つ者が1人。


「大丈夫でござったか?」

優しげな古風の口調で言うその男。



これが、俺と春彦の初めての出会いだった



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