夏の日

@takajiro

先約

ある夏の日。

就職せずフリーターをやっている俺とは違い、一つ下の彼女は就職先を早々と決め学生最後の夏休み中らしい。

夏祭りが近々あるそうで、彼女は嬉しそうに屋台の食べ物を列挙してる。

「いくか?」と聞くと、「う〜ん…。」という相槌と困ったような顔で半分断られた。

半分だ。

もう半分は、「行きたい」というか「彼氏と行かないといけないよね」という必然性というか世の中の普通というモノを受け入れようとしていた。

「先約があるなら、そっちで行ってきたら?学生最後だし、サークルのみんなと行きたいんじゃない?」

と俺が言うと、さっきとは打って変わって曇りのない笑顔で「え!いいの?」と応えてくる。

彼女が喜ぶなら、俺は少し寂しいけど、

「行ってくるといいよ!」と送り出すほかないだろう。

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