工場生産(近未来SFショートショート)


 がちゃこん、がちゃこん。


 機械は何も考えず、ただひたすら動き続ける。

 たとえ私が居なくなっても、こいつらは動き続けるのだろう。

 その姿は、どこかゾンビに似ているかもしれない。


 がちゃこん、がちゃこん。


 機械は何も疑問に思わず、黙々と商品を作り続ける。

 こいつらに、どれほどの人間が仕事を奪われたのだろう。

 いずれは全ての仕事を機械がこなす時代になるらしい。

 いつか漫画や小説ですら、機械が書く日がくるかもしれない。


 私の息子も、その一人。

 息子はタクシードライバーだった。

 文字通り自動で運転してくれるようになった自動車に、走り慣れた街を追い出された。


 そして機械にはまだ運転できない、危険な場所での運転ばかりをさせられた。


 がちゃこん、がちゃこん。


 機械は何も見ないまま、黙々と商品を私に渡す。

 こいつらは愚かで盲目で、私の姿は決して映らない。

 私のしている事が、わからない。


 私の仕事は、最終チェック。

 機械に渡された自動走行ロボットの部品を、ひとつひとつ傷つけていく。

 千個に一個は検品に出すので、それ以外の全てに傷をつけていく。


 ああ、息子よ。

 お前の死は無駄にはしない。

 私はこの国に警鐘をならそう。

 タクシードライバーは人間であるべきだと教えてやろう。


 機械がどれほど愚かであるか、誰もが知る事になるだろう。









 ――そして、その工場では検品もロボットが行うようになった。

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