金曜の夜は長い

カゲトモ

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「おつかれさま」

「っす・・・」

 金曜のラストは大体二時近くになることが多い。ラストオーダーが一時でも、客が帰るまでは店を閉めない事にしているからだ。もちろんあまり遅いと声を掛けることもあるが。

 今日は女性客が多かったこともありいつもよりクローズの札を下げたのが遅かった。ひと騒動起こして行ったミヨはとっくの昔に帰ってしまっている。「これから彼女と会う約束してるんだぁ」と軽やかな足取りで店を出て行っていた。こんちくしょうめ。

「はぁ」

 モップ掛けをする斉藤君からため息が零れる。確かに鏡は忙しかった。客の回りは早かったし、今日は特別フルーツカクテルの注文が多かったのだ。生や冷凍した果物を使うフルーツカクテルは作るのに時間が掛かるものが多い。しかも店員は俺と斉藤君の二人。狭い店だと言ってもその注文が続けば店を回すのは大変だ。

 斉藤君はきっと疲れているのだろう。それは純粋に働いた疲れだけではないだろうことは容易に想像がつく。ミヨのことでかなりドッと疲れたに違いない。だってミヨ事件(俺命名)の時に崩れ落ちていたし、その後から斉藤君の笑顔が若干引きつっていたのだから。

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